農業用水路を活用した小水力発電のための塵芥侵入防止装置

要約

農業用水路に設置可能な塵芥侵入防止装置である。除塵スクリーン下部を満水とすることにより、塵芥を下流へ放流しながら、発電用の流水を取水することが可能である。塵芥を取り除く必要がないため、水車発電機の連続運転が可能であるとともに保守・管理作業の省力化が期待できる。

  • キーワード:小水力発電、除塵、塵芥、堰板、スクリーン
  • 担当:農業機械化促進・環境負荷低減技術
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・特別研究チーム(エネルギー)
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水力発電を行う上で、水路内に流入してくる塵芥が発電機の詰まりや破損を引き起こす恐れがあるため、塵芥を除去する方法が大きな課題となっている。ダムや河川等を利用する大規模な水力発電では、動力を用いた大型の除塵装置が既に利用されているが、農業用水路等を利用する小水力発電用に実用化された除塵装置はまだ少なく、このことが小水力発電の普及が進まない一因となっている。そこで、農業用水路を対象とした小水力発電のための塵芥侵入防止装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は、スクリーン、上・下流2枚の堰板、側面板、導水板、塵芥排水路から構成され、無電源での利用が可能である。上・下流2枚の堰板で水路内の流水を堰止めることにより、上流からの流水は堰板(上流側)の上端部で溢水し、スクリーン上を流れる水とスクリーン下に通過する水に分流される。落ち葉、雑草等の塵芥はスクリーンを通過できないため、塵芥排水路を経て下流に流される。スクリーンを通過した水は堰板(下流側)の取水口から取水され、発電等に利用可能である。小石、砂利等の比重の大きな塵芥は上流側堰板手前で堆積する(図)。
  • 堰板(下流側)の取水口は、流量の多少に応じ取水量調節をすることが可能であり、流量が少ない場合でも堰板の上流側と下流側の間を満水に保つことでスクリーン上の流れを維持して塵芥を下流へ流すことができる。導水板は、スクリーン下に通過した水を下流方向へ導く効果があるため、落ち葉等のスクリーンへの堆積を防止できる。
  • 多量の塵芥(雑草)を用水路に投入した場合、「塵芥侵入防止装置あり」では、詰まりが発生することなく水車の稼働を維持でき、電圧降下も7%程度で発電効率への影響は小さいのに対し、「塵芥侵入防止装置なし」では、詰まりが発生して水車が停止する(表1)。
  • 塵芥侵入防止装置を設置することで塵芥の詰まりによる水車停止がなく連続的な発電が可能となる。また、水路外への越流被害を防止できる(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:小水力発電事業者、農業者
  • 普及予定地域・普及予定台数等:小水力発電が可能な農業用水路等。市販化5年間で12台(全国の小水力発電可能な農業用水路595 ヶ所(環境省調べ)の約2%)
  • その他:2015年度に現地実証を行った後、各地に導入する予定。下掛け水車、滝用水車等様々な水車に適用可能である。設置の際は、現場の流況に応じ、越流対策を講じる必要がある。

具体的データ

図,表1~2

その他

  • 中課題名:環境負荷の低減及び農業生産資材の効率利用に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
  • 中課題整理番号:600b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:臼井善彦、藤井幸人、PHAN DANG TO、飯尾昭一郎(信州大工)、片山雄介(信州大工)、牧志龍男(日本エンヂニヤ)、鈴木栄二(日本エンヂニヤ)
  • 発表論文等:臼井ら 特願2015-023747(2015年2月10日)