慣行手作業の2倍の能率で処理できる種イモ用のナガイモ切断装置

要約

ナガイモのイモ長と外径を測定することで種イモの設定質量に沿って切断刃の間隔を制御し、種イモ用の切片に一度に切り分ける切断装置である。慣行手作業と比較し、切り分け作業の精度は同等で、2人組作業を想定した作業能率は約2倍である。

  • キーワード:ナガイモ、種イモ、切断、形状推定
  • 担当:農業機械化促進・省力化農業機械
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・園芸工学研究部
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

現状のナガイモの種イモを準備する切断作業は、1本のナガイモを肩部と胴・尻部(図1(a))、それぞれの設定質量に沿って切り分けているが、催芽までを含む種イモ準備作業は手作業で行われているため、他の作業工程に比べて多くの労働時間を要し、全投下労働時間の約3割を占めている。また、その切断作業は数日間で行う必要があるため、多くの労力が必要で、種イモ切断作業の機械化が強く求められている。そこで、大きさ等が多様なナガイモに対し、肩部と胴・尻部それぞれの設定質量に沿って切断間隔を制御でき、省力的にナガイモを切断できる装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 切断装置は、ナガイモを載せる受け皿を有するチェーン搬送式の供給部、ナガイモのイモ長(約φ25mmの肩部から尻部先端までの長さ)と外径を測る計測部、スチール線の切断刃と押切板で押し切る切断部、平ベルトコンベアの搬出部、パソコンによる制御部で構成される(図1(b)、表1)。
  • ナガイモのイモ長と2ヶ所の外径からナガイモの形状及び質量を推定し、パソコンに予め入力された形状データ(形状推定モデル)と照合してナガイモの切断位置を決定する。なお、外径の測定位置は、約φ25mmの肩部から105mmと255mmである。
  • 供給されたナガイモに対し、イモ長及び外径の測定、形状推定モデルに基づく切断刃の間隔調整、切断刃上へのナガイモの転動、押切板の下降による切断(これにより一度に切り分ける)、コンベアによる種イモ切片の機外への搬出の順で行われる。
  • 切り分けた種イモ切片(図1(c))の平均質量は、設定質量を肩部70g、胴・尻部120gにした場合、肩部が約73g、胴・尻部が約121gで、切り分け精度は熟練者の慣行手作業と同等である(表2)。
  • 処理速度は9.5s/本、処理能率は約380本/hであり、ナガイモの平均質量が750~900g、切断装置の稼働時間が7h/日の時、処理量は2.0~2.4t/日である。1人がナガイモの供給を行い、もう1人がナガイモの供給準備や切断した種イモの次工程への運搬等を行う2人組作業の場合、作業能率は、慣行手作業(400~500kg/人・日)の約2倍である(図2)。また、測定値及び分割数がパソコンに保存されるため、切断した種イモ数等が分かり、準備する種イモの切片数の目安として利用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:ナガイモを種イモとして利用している生産者。ナガイモは、全長が300~650mm、外径が70mmまで対応可能である。切断刃やコンベアに付着したナガイモの破片の除去を適宜行う。本成果は「十勝選抜系統」のものであり、品種ごとに事前に形状推定モデルを作成する必要がある。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:普及予定地域は主に北海道や青森県。普及台数20台。
  • その他:2016年度に市販予定。

具体的データ

図1~図2,表1~表2

その他

  • 中課題名:農作業の更なる省力化に資する農業機械・装置の開発
  • 中課題整理番号:600a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:大森弘美、千葉大基、八谷満、五十嵐正和(三菱マヒンドラ農機)、姜興起(帯広畜産大学)
  • 発表論文等:八谷ら 特開2014-151394(2014年8月25日)