キンカチャの黄色花弁の発色にはアルミニウムが関与する

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要約

キンカチャ花弁の鮮やかな黄色は、アルミニウムとフラボノイドの相互作用によって発色する。

  • キーワード:キンカチャ、黄色ツバキ、フラボノイド、アルミニウム
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ツバキ属のキンカチャは鮮やかな黄色花弁を持つことから、黄色ツバキ品種作出のための遺伝資源として期待されている。しかし、キンカチャ花弁の黄色発色機構は明らかにされていない。主要な黄色色素であるフラボノイドは淡黄色色素であることから、キンカチャの濃黄色発色には他の因子が関与していると考えられる。そこで、フラボノイドがアルミニウムと錯体を形成して濃黄色を呈する性質があること、およびキンカチャ近縁種のチャがアルミニウムを蓄積する性質を持つことに着目して、キンカチャの黄色発色機構を解明する。

成果の内容・特徴

  • 黄色の濃淡が異なるキンカチャの花を比較すると(図1)、花弁中の主要フラボノイドの組成と含有量に両者で大きな差は認められない(表1)。フラボノイドの黄色発色に関与する花弁のpHはどちらも5.8である。一方、濃黄色花弁は淡黄色花弁に比べて3倍量のアルミニウムを含んでいる。
  • 白花ヤブツバキ花弁(図1)は、キンカチャと比べ、フラボノイドおよびアルミニウム含有量、pH、いずれも低い(表1)。
  • キンカチャ花弁は、約420 nmに吸収極大を有する吸光特性を示す。主要フラボノイドの1つであるケルセチン3-ルチノサイドの溶液をpH 5.8に調整すると、約350 nmに吸収極大を示すほぼ無色の溶液となる。この溶液に塩化アルミニウムを添加すると、約420 nmに吸収極大が形成され、濃い黄色を呈する(図2)。
  • キンカチャ花弁の色素抽出液を陽イオン交換カラムに通し、アルミニウムを除去すると、420 nm付近の吸光度が減少し、水溶液の黄色が淡くなる。これに塩化アルミニウムを添加すると吸光度と黄色が回復する。
  • 以上の結果から、キンカチャの黄色花色発現は、アルミニウムとフラボノイドの相互作用によるものと結論づけられる。

成果の活用面・留意点

  • 黄色の花色発現に金属を必要とする植物を見出した初めての報告である。
  • 花弁のフラボノイドとアルミニウムの蓄積能力が高く、よりpHが高い品種・系統を見出し、これを交配親に用いることで、濃黄色ツバキ品種が育成できる可能性がある。
  • 黄色の鮮やかなキンカチャの花を開花させるためには、アルミニウムの供給が重要な要素と考えられる

具体的データ

図1 左から、キンカチャ(系統566、濃黄色)、キンカチャ(系統566、淡黄色)、ヤブツバキ(系統622、白色)

表1 pH、主要フラボノイドおよびアルミニウム含有量

図2 50 μMケルセチン3-ルチノサイド溶液(0.1 M酢酸緩衝液、pH 5.8)に塩化アルミニウムを0 μM(左端)から50 μM(右端)まで5 μMずつ添加した時の溶液の色の変化。

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 課題ID:313-b
  • 予算区分:基盤、ジーンバンク
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:谷川奈津、柏原輝彦(東京理科大)、保倉明子(東京理科大)、阿部知子(理研仁科センター)、
                       柴田道夫、中山真義
  • 発表論文等:Tanikawa N. et al. (2008) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 77: 402-407.