miR157過剰発現トレニアでは草姿が変化し花付き期間が延長される

要約

シロイヌナズナのmiR157bを過剰発現する組換えトレニアでは長期にわたり花を付けるほか高度に分枝して草姿が大きく変化することから、草姿や花付きの改良に利用できる。

  • キーワード:マイクロRNA、miR156/157、SBP-box遺伝子、トレニア、成長相移行
  • 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

シロイヌナズナのmiR156/157は幼植物期から成熟期への成長相の移行を標的遺伝子産物の分解による機能抑制を介して制御するマイクロRNAであり、これを過剰発現したシロイヌナズナでは成長相移行の遅延と枝分かれの増加がおこるが、これを利用の観点で捉えた報告はまだない。本研究ではmiR156/157を園芸的に利用することを目的として、miR157b過剰発現トレニアの詳細な表現型観察と定量解析により植物の特性を調査する一方、miR157の標的遺伝子であるSBP-box転写因子遺伝子をトレニアから単離・解析し、草姿と花付きの制御機構を調査する。

成果の内容・特徴

  • シロイヌナズナmiR157bを過剰発現する組換えトレニアではシロイヌナズナと同様に幼植物期の丸く縁辺のなめらかな葉をつけ成長相移行の遅延が見られる(図1)。また、枝分かれの増加および節間が短くなることにより、草姿が大きく変化する(図2)。
  • 通常、野生型のトレニアは鉢上げ後4か月程度で枯死するが、miR157b過剰発現トレニアでは生殖成長への完全な切り替わりが起こらないため、6か月以上にわたり枯れずに花を付けながら成長を続ける(図2)。
  • トレニアからmiR156/157による制御のターゲットとなるSBP-box遺伝子を6種類単離した。miR157bを過剰発現するトレニアでは、これら遺伝子の発現が低下するほか、SBP-boxタンパク質で発現が制御されると予測されるTfLFYおよびTfMIR172遺伝子の発現も低下する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • miR156/157の機能はシロイヌナズナとトレニアで共通しており、またmiR157やSBP-box転写因子は植物種を越えて保存されていることから、様々な植物種に本手法が応用可能である。

具体的データ

 図1~3

その他

  • 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
  • 中課題番号:141h0
  • 予算区分:イノベーション創出事業、交付金
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:大坪憲弘、四方雅仁、山口博康、佐々木克友
  • 発表論文等:Shikata M. et al. (2012) Planta 236: 1024-1035