日本国内への侵入警戒を要するポスピウイロイドの宿主範囲

要約

ジャガイモやせいもウイロイドおよびトマト黄化萎縮ウイロイド、トマトアピカルスタントウイロイド、コルムネアラテントウイロイドは主にナス科およびキク科の野菜と花き類に感染する。

  • キーワード:園芸植物、ポスピウイロイド、宿主範囲、キク科、ナス科
  • 担当:環境保全型防除・生物的病害防除
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

国内のトマトにおいて、2006年にトマト黄化萎縮ウイロイド(Tomato chlorotic dwarf viroid; TCDVd)の感染が初めて確認され、2009年にはジャガイモやせいもウイロイド(Potato spindle tuber viroid; PSTVd)の感染が認められた。これらのウイロイドは感染種苗によって国内に侵入したと考えられる。これらのウイロイドはトマトやバレイショに感染すると矮化や萎縮などの激しい病徴を示す。PSTVdやTCDVdと同じポスピウイロイド属のトマトアピカルスタントウイロイド(Tomato apical stunt viroid; TASVd)やコルムネアラテントウイロイド(Columnea latent viroid; CLVd)は国内未発生ではあるが、PSTVdやTCDVd同様、トマトやバレイショにおいて矮化や萎縮などの激しい病徴を示す。そこで、これら4種のポスピウイロイドが種苗によって国内に侵入するリスクを明らかにするために、国内に輸入される野菜および花き類などの園芸植物を対象に汁液接種を行い、RT-PCR法で感染の有無を明らかにすることでこれらウイロイドの宿主範囲を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • PSTVdおよびTCDVd、TASVd、CLVdはキク科のキンセンカ、ダリア、シュンギク、アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールド、ナス科のトウガラシ、ペチュニア、ナスに感染する(表1)。さらにTCDVdおよびTASVdはキキョウ科のロベリアに感染する。しかし、それらの多くは無病徴である。
  • TASVdまたはCLVdに感染したキンセンカでは葉のえそや茎のえそが生じる。
  • PSTVdに感染したペチュニアは矮化症状を示す。
  • TCDVdまたはTASVdに感染したペチュニアは葉の黄化が生じる。
  • PSTVdまたはTCDVd、TASVd、CLVdに感染したナスは葉脈の暗紫化を生じる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:農林水産省植物防疫所および植物検疫にかかる行政部局
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本全域
  • その他:
    1)これらの成果は、植物防疫法施行規則(省令)別表の改正(遺伝子検定の実施を輸出国に要求する宿主植物の範囲を追加)の根拠である(平成26年2月24日 農林水産省令第十二号)。
    2)表1の感染宿主となるほとんどの植物種は病徴を示さないため、感染の判定はRT-PCR法等の遺伝子検出技術を利用することが望ましい。
    3)感染の有無は品種間差があると考えられるため、表1において感染が認められなかった植物種の全ての品種が感染しないとはいえない

具体的データ

表1

その他

  • 中課題名:生物機能等を活用した病害防除技術の開発とその体系化
  • 中課題整理番号:152a0
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(レギュラトリーサイエンス)
  • 研究期間:2011~2014 年度
  • 研究担当者:松下陽介、津田新哉
  • 発表論文等:
    Matsushita Y. and Tsuda S. (2014) Eur. J. Plant Pathol.
    doi:10.1007/s10658-014-0518-2