リンゴの新品種'きざし'

要約

成果の内容・特徴

  • 技術・情報の内容及び特徴 わが国には早生の優良品種が少なく、‘つがる’や‘さんさ’が早生として 扱われている。しかし、温暖地においても、これらの品種の成熟期は8月中旬以降で、 7~8月の夏熟リンゴの需要増加には未熟果が当てられ、消費者の不評を買い、さらに リンゴそのものの消費拡大にも悪影響を及ぼしてきた。このため、各方面から 優良早生品種の育成が強く求められていた。
     1. 育成経過:昭和44年に開始した第3次育種試験においては、早生の優良品種の育成を 目的とし、ニュージーランドの国立科学産業研究所(D.S.I.R.)との共同研究を 実施した。
    本品種は、昭和44年5月に盛岡支場から送付した花粉を用い、D.S.I.R.で10月に交雑を 行ない、獲得した種子を盛岡支場で播種、育苗した‘ガラ×ふじ’の交雑実生311個体 の中から選抜した個体で、平成2年6月3日に農林登録された。種苗法による登録は 現在申請中である。
     2. 果実の特性:成熟期は長野で8月上旬、盛岡で8月中・下旬となり、‘つがる’より 約20~30日早く成熟する。大きさは160~220gで‘つがる’に比較するとかなり小さい が、250gは十分確保できる。全面濃紅色に着色し外観は比較的良好である。ただし、 年によってはさびが発生し多少外観をそこねる。糖度は13%前後で早生品種としては 高い。リンゴ酸は0.63~0.93g/100mlで食味は濃厚であるが、やや酸味の強い傾向が ある。ただし果汁が比較的多く肉質も良好なことから、盛夏期のリンゴとして 風味爽快である。日持ち性はやや短く完熟した果実の鮮度保持期間はほぼ5日程度 である。
     3. 樹の特性:樹勢は旺盛で大きくなり半開張性を示す。中・太枝の表面がやや粗皮状と なるが生理的障害に基づくものではない。花芽の着生が多く、ゴールデンを除く一般 栽培品種との交雑和合性も高く豊産性である。収穫前の着果は少ない。現在のところ 特に問題となる病害は認められていない。
    表1 ‘きざし’の特性調査結果
    表2 ‘きざし’の地帯別特性調査結果
  • 技術・情報の適用効果
    高品質早生品種として盛夏期のリンゴの需要を満たすとともに、未熟な‘つがる’や ‘さんさ’などの早期出荷を抑制し、これら品種の高品質果実の流通を可能にする ことから、リンゴ全体の消費拡大に貢献できる。
  • 適用の範囲
    リンゴ栽培地帯全域。特に温暖なリンゴの早出し地帯での適用効果が高い。
  • 普及指導上の留意点
    早期摘果に努めるとともに過剰着果を避け250g程度の大きさに揃える。酸味が強いため 早採りは避けるべきであるが、日持ち性のやや短いことに十分留意する必要がある。 収穫適期は地色の黄色味があまり強くならない内で、2~3回のすぐりもぎとするのが 安全である。

具体的データ

表1 ’きざし’の特性調査結果

表2 ’きざし’の地帯別特性調査結果

その他

  • 研究課題名:リンゴ第3次育種試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :昭和44年~平成10年
  • 発表論文等:園芸学会雑誌第59巻別冊2(1990)、果樹試報告第20号(印刷中)