晩生のモモ新品種'あきぞら'

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要約

満開から140日余りで収穫される晩生の白肉モモ品種である。果実は300g近い大玉となり,果肉は溶質で日持ち性に優れ,糖度が高く酸味は少なく,品質良好である。‘白桃’の後に収穫される品質の優れた品種として普及が期待される。

背景・ねらい

モモ栽培においては,高品質果実の生産とともに,出荷時期の拡大が課題となっている。果樹試験場では,これまでに早生,中生,晩生の優良品種を育成したが,近年,‘白桃’‘ゆうぞら’などの晩生品種のさらに後に収穫される優良品種が求められるようになった。こうした要望に応え,モモの生産の拡大と安定化を図るため,従来の晩生品種のさらに後に収穫可能な高品質品種の育成を目標とした。

成果の内容・特徴

  • 本品種は昭和48年(1973)に‘西野白桃’に‘あかつき’を交雑して得られた実生から育成された交雑実生品種であり,昭和56年(1981)からモモ第5回系統適応性検定試験に供試され,福島県果樹試験場,岡山県農業試験場など8場所で評価が行われた結果,平成5年7月に‘あきぞら’と命名され,‘もも農林21号’として農林登録された。
  • 樹姿はやや直立性,樹勢はやや強く,花芽の着生は多い。開花期は育成地で4月上中旬となる。花粉を有さず,雄性不稔性である。生理的落果の発生が見られる(表1)。
  • 果形は円ないし扁円形で玉ぞろいは比較的良好であるが,果皮の着色は少なく,有袋栽培が必要である。果肉はやや軟らかく密で日持ち性は良好である。渋みの発生は認められない(表2)。
  • 収穫期は満開後140日余りとなり,‘ゆうぞら’より1週間から10日遅く収穫される。果実重は平均で280g余りと大きい。屈折計示度は14~15%となり,‘白桃’より2%余り,‘ゆうぞら’よりも1.5~2%程度高く,食味はきわめて良好である(表3)。

成果の活用面・留意点

モモの品質向上,出荷時期の拡大に有効である。着色が劣るので,遮光率の高い果実袋を用い,収穫前に除袋して着色の向上につとめる必要がある。また,花粉を有しないので,受粉樹の混植が必要である。成熟期が遅いので,収穫期が9月下旬から10月に入る東北地方北部,及び標高の高い地域では正常な成熟が困難な場合がある。

具体的データ

写真1.‘あきぞら’ 写真2.‘あきぞら’

 

表1  ‘あきぞら’の地域別樹性,開花期及び収穫期(1992)

 

表2  ‘あきぞら’の果実特性(1992)

 

表3‘あきぞら’,‘白桃’及び‘ゆうぞら’の年次別成熟日数,果実重及び屈折計示度

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:モモ(生食用)第5回系統適応性検定試験
  • 研究期間・予算区分:昭和56~平成4年・経常
  • 研究担当者:山口正己,西村幸一,京谷英壽,吉田雅夫,中村ゆり,土師岳,小園照雄,福田博之,西田光夫
  • 発表論文等:モモ新品種‘あきぞら’について,園学雑,63(別1),1994(投稿中)