カンキツ類の体細胞雑種の果実特性及び稔性

要約

カンキツ類の体細胞雑種は,いずれも果皮が厚かったが,食味や香り等で育種親として興味ある特徴を示した。また,これら体細胞雑種はいずれも稔性花粉を産し,種子形成も正常に行われることを確認した。

背景・ねらい

カンキツ類において細胞融合法を開発し,新たな特性を有する育種素材を作出する。

成果の内容・特徴

  • カンキツにおける細胞融合法が開発され,オレンジとカラタチの体細胞雑種の他,多くの体細胞雑種が作出された。これら体細胞雑種の諸特性を調査した結果,体細胞雑種はいずれも十分量の花粉を形成し,その発芽率は9.9~41.7%で交雑に十分使用できる高さであった。また,これら体細胞雑種はいずれも発芽力のある種子を形成した。このように,カンキツ類において作出された体細胞雑種は,いずれも正常な雄性・雌性器官を形成することが明らかとなった。
  • 体細胞雑種の果実特性については,複2倍体(4倍体)であるためいずれも果皮が厚かったが,ウンシュウミカンとネーブルオレンジの雑種は,パイナップル様の特有の芳香を有し興味がもたれた。マーコットとネーブルオレンジの雑種にも弱いオレンジ香があり,風味が良かった。ユズとネーブルオレンジの雑種は,ユズ香を示したが,ユズよりも香りが柔らかで,食味も柔らかであった。グレープフルーツとネーブルオレンジの雑種は,裂果のため成熟には至らなかったが,グレープフルーツに似た外観,食味と香りであった。これらの体細胞雑種は,いずれもじょうのう膜に若干の苦みがあったが,育種親として興味のある特性を有した。オレンジとカラタチ,オレンジとトロイヤーシトレンジ及びネーブルオレンジとトロイヤーシトレンジの雑種は,いずれもカラタチ特有のヤニ臭さが若干あり,風味が劣った。

成果の活用面・留意点

無核品種の育成に3倍体の利用が試みられているが,体細胞雑種に稔性があったことから2倍体との交雑により3倍体実生を作出することが可能である。また,半数体と2倍体との融合により直接3倍体を作出することも可能である。すでに,このような3倍体が得られている。以上のことから,細胞融合は新たな育種素材を作出する有力な手法であると考えられる。

具体的データ

表1 体細胞雑種の花粉稔性及び種子数

 

表2 体細胞雑種の果実特性(12.15 調査)

 

その他の特記事項

研究課題名:カンキツ類における細胞融合による育種素材の作出
研究期間・予算区分:昭和61~平成5年・経常
研究担当者:小林省蔵,中村ゆり,大河原敏文
発表論文等:S.Kobayashi, T.Ohgawara, W.Saito, Y.Nakamura and J.Shimizu. Application of somatic hybridization to the production of seedless citrus cultivars. XV International Botanical Congress, Yokohama, Japan, 8.5.4-4,1993.