果実細胞のサイズおよび数の簡便・迅速な測定・評価法

要約

果実の大きさの構成要素である果実細胞のサイズおよび1果あたり細胞数の測定法として,スンプ法(型どり法)を利用したプレパラート作製法と新しい指数(CSSI,CNI) を使った測定・評価法を開発し,測定時間を従来法に比べて飛躍的に短縮した。

背景・ねらい

果実細胞のサイズと数は,測定誤差が大きい等の理由から,正確に測定するためには,膨大なサンプルが必要となる。しかし従来から行われている,凍結切片や,パラフィンや樹脂による包埋切片を作る方法は,プレパラート作りにかなりの手間と時間を必要とする。この技術は,葉面の気孔数の調査等に使われるスンプ法(型どり法)を利用して,迅速にサンプルを作り,またサンプルを検鏡する場合に,新しい指数を導入して,細胞数およびサイズの計測や評価を正確かつ容易にした。

成果の内容・特徴

  • プレパラート作製法:果実を赤道面で2分し,切断面に酢酸メチル+アセトンを塗布する。この面にアセチルセルロースフィルムを押しつけ,型どりする(スンプ法)。従来法では,ひとつのサンプルを作製するのに数時間から数日かかるが,この方法により2,3分で永久プレパラートが作製でき,かつ高価な装置は不要である。図1に顕微鏡画像を示す。
  • 計測法:光学顕微鏡の画像上にサンプルの実寸で1辺1mm程度の正方形を描き,この辺が横断した細胞数を計測する(図2)。
  • 評価法:導入した指数は表1の通りである。細胞の大きさの評価はCSSI (Celland Space Size Index)を使う。これにより従来法よりも計測時間は短くなった。CNI (Cell Number Index)は果実の全細胞数に比例する指数となる。細胞の縦・横径と果実の縦・横径から果実の細胞数を推定する従来法は,細胞間隙の大きさの変化を1果当たり細胞数に反映させることができなかった。

成果の活用面・留意点

果肉と果心の細胞サイズが異なるときはそれぞれ計測する必要がある。正方形を描くのが困難な場合は直線上の細胞数を数える。ニホンナシでは開花直後から収穫期まで測定が可能であるが,他の柔らかい果実での利用は,今後の課題である。

具体的データ

表1 指数について

 

図1 スンプ法(型どり法)によるニホンナシ果肉細胞の顕微鏡画像 図2.顕微鏡画像上に描く正方形と、その辺が横断した細胞の模式図

図1 スンプ法(型どり法)による
ニホンナシ果肉細胞の顕微鏡画像

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:樹体及び果実の生長・品質に及ぼす気象要因の影響解明と制御技術の確立
  • 研究期間・予算区分:平成3~5年・経常
  • 研究担当者:杉浦俊彦,本條均,堀本清,夏秋道俊,芳野茂樹,高野孝夫,植田稔宏
  • 発表論文等:ニホンナシにおける果肉細胞分裂速度の温度間差のスンプ法による測定について,園学雑,62(別2),1993