白肉缶詰適性を有するモモ新品種候補「モモ筑波117号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

モモ新品種候補「モモ筑波117号」は「153-5」と「139-28」の交雑実生から選抜された白肉の中生系統である。無袋栽培下でも果皮及び果肉は無着色性で、肉質が良好で優れた白肉缶詰製品が得られることから、「大久保」に代わる白肉缶詰用品種として、東北地方等に適する。

  • 担当:果樹試験場・育種部・核果類育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

我が国の加工モモとしては、白肉缶詰用に「大久保」が栽培されてきたが、有袋栽培が必要であり、近年、労力不足から栽培が著しく減少している。このため、無袋栽培の可能な白肉缶詰用新品種の育成を目標に試験を行った。

成果の内容・特徴

  • 果樹試験場において昭和60年(1985年)に、白肉の「153-5」に果肉が不溶質の「139-28」を交雑し、得られた種子を同年秋に播種し、低温処理後に、翌年より3年間苗圃で養成を行った。昭和63年(1988年)秋に、果樹試験場千代田圃場に定植し選抜を行った。昭和63年(1988年)に初結実し、平成6年(1994年)よりモモ(生食用)第7回系統適応性検定試験に「モモ筑波117号」として供試した。栽培性とともに缶詰適性の検討を行った結果、平成8年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種候補にふさわしいとの合意を得た。
  • 樹勢はやや強く、樹姿はやや立ち気味となる。枝の発生は多く、花芽の着生はやや多い。生理落果、核割れの発生は少ない(表1)。
  • 収穫期は満開後110日~120日頃で、「あかつき」より1週間から2週間後となる(表1)。
  • 果実の大きさは140~260g、平均200g前後の中玉で、果形は扁円形、果皮色は乳白で赤い着色はない。果肉内及び核周囲の紅色素の着生も全くみられない特異な形質を有する。糖度は12~15%で「あかつき」と同程度、酸味はpHで4.5~5.0と少ない(表2)。
  • 缶詰製品の品質は、色調が良好で、肉質も締まり、「大久保」の無袋果にくらべて優れている(表3)。

成果の活用面・留意点

無着色性の白肉品種であり、「大久保」に代わる省力栽培可能な缶詰用品種として生産の安定化に有効であり、これまで「大久保」の栽培の多かった東北地方等に適する。梗あが深く、枝の圧迫痕が発生しやすいため、短果枝への結実を心がける必要がある。

具体的データ

表1 モモ筑波117号の樹及び果実特性

表2 モモ筑波117号の果実特性

表3 モモ筑波117号及び大久保の缶詰製品品質調査結果

その他

  • 研究課題名:モモ第7回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(昭和60年~平成8年)