食味良好でオレンジ香のあるカンキツ新品種候補「カンキツ口之津20号」

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要約

カンキツ新品種候補「カンキツ口之津20号」は、「清見」に「トロビタ」オレンジを交雑し、育成したタン ゴールである。肉質が柔軟・多汁でオレンジ香があり、減酸しやすい食味良好な少核品種である。成熟期は12 月下旬~1月上旬である。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹、九州
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

年内に収穫されるカンキツはウンシュウミカンがほとんどであり、品種構成に片寄りがある。そのため、ウ ンシュウミカンと異なる特徴を有する早生カンキツが求められている。 そこで晩生カンキツのなかで品質が優れている「清見」を母親として用い、それにオレンジのなかでは比較 的早熟な「トロビタ」オレンジを父親として交配し、剥皮性があり、芳香のあるタンゴールタイプの高品質カ ンキツを育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 昭和41年(1966)、果樹試験場興津支場(現カンキツ部(興津))において、「清見」に「トロビタ」オ レンジを戻し交雑して育成した系統である。その後、口之津支場(現カンキツ部(口之津))において定植・ 選抜し、第7回系統適応性・特性検定試験で検討した。
  • 果実は100~180gで中果。果形は扁球~球であり、果梗部が突出し、わずかにネックを生じること もある。果皮は橙~赤橙色で薄く、剥皮性は「清見」よりも容易である。果面は平滑であるが油胞が目立つ。 「清見」程度のオレンジ香がある。熟期は12月下旬から1月上旬で、酸切れがよ く食味良好である。果肉は橙色で、じょうのう膜は薄くて食べやすく、肉質は柔軟・多汁である。種子数は0 ~5粒程度で少ない。単為結果性が強い(表1、2)。
  • 樹勢は中~弱で、樹姿は中~開張、場所によっては下垂する。結実性は中程度である。そうか病に は強いが、かいよう病にはやや弱い。トリステザウイルス(CTV)に対してはり病性であるが、ステムピッティン グの発生度は軽い(表2)。

成果の活用面・留意点

西日本のカンキツ栽培地帯に適する。「口之津20号」は減酸が早く、良食味で果実品質は良好であるが、樹 勢が弱いとの指摘がある。肥 培管理、適正着果に留意し、樹勢の維持・強化を図る必要がある。また、高糖系品種ではないため、強勢台木 への高接ぎは樹勢が強くなり品質の低下をまねきや すい。

具体的データ

表1 「口之津20号」の果実特性

表2 「口之津20号」の樹性と成熟期、病害発生程度

その他

  • 研究課題名:晩生カンキツの新品種育成
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(昭和41年~平成7年)