長期の高濃度炭酸ガス処理による果樹の光合成効率の上昇とその維持法

要約

高濃度炭酸ガス条件下のブドウの光合成速度は上昇するが上昇程度はしだいに低下する。その一因としてRubisco酵素活性の低下がみられた。光合成効率の維持には窒素の施用が有効である。

  • 担当:果樹試験場・カキブドウ支場・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:生理
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

果樹などの生産性の向上のために閉鎖系における高濃度炭酸ガスの供与が試みられているが、果樹に対する炭酸ガスの影響は不明な点が多い。そこで、高濃度炭 酸ガス下に長期間にわたって置かれた果樹の光合成作用を中心とした生理機能に及ぼす影響を明らかにし、その特性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 通常大気濃度の約3倍の炭酸ガス(1200ppm)下に置かれたブドウの光合成速度は急速に向上し、通常大気濃度下の約250%に高まる(図1)。また比葉重、葉中クロロフィル量も上昇する(表1)。
  • 光合成速度は高濃度炭酸ガスの供与によりいったん上昇するが、供与開始後その上昇程度はしだいに低下する。すなわち、ブドウでは通常大気濃度下での250%に上昇した光合成の上昇程度は処理後約30日で180%程度までに低下する(図1)。
  • このような光合成効率の低下は植物の葉における炭酸ガスの取り込みに関与しているRubisco酵素の活性低下が一因である(図2)。
  • 光合成効率が低下してきたブドウに対して即効性の窒素肥料を供与するとRubisco酵素活性は上昇し、それに伴って光合成速度は再び増加する(図1、2)。
  • 以上のように高濃度炭酸ガスを長期間供与する場合に、施用直後の高い光合成効率を維持するためには葉面散布などによる窒素の定期的施用が必要と判断される。

成果の活用面・留意点

施設栽培での炭酸ガス施用栽培において、高い光合成を維持するための基礎的データとなる。樹種による反応の違い、適正シンク量(着果量)の程度などについてはさらに検討が必要である。

具体的データ

図1 ブドウの高濃度炭酸ガス条件下における光合成効率の変化

表1 高濃度炭酸ガス施用樹の比葉重及び葉中クロロフィル量(ブドウ)

図2 高濃度炭酸ガス環境下におけるRubisco活性の推移

その他

  • 研究課題名:農林水産生態系を利用した地球環境変動要因の制御技術の開発
  • 予算区分 :一般別枠(地球環境)
  • 研究期間 :平成8年度(平成2年~8年)
  • 発表論文等:高濃度炭酸ガス条件下における果樹の光合成効率の維持、園芸学会雑誌、
                      第64巻別冊2、1995。