「豊水」と「新高」の間に熟する、大果のニホンナシ新品種候補「ナシ筑波47号」

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要約

ニホンナシ新品種候補「ナシ筑波47号」は「162-29」に「幸水」を交雑して育成したやや晩生の赤ナシである。「豊水」以降に成熟する既存の品種と比較して果実外観良好で、また果実品質優良であり、東北地方から九州までのナシ産地に適する。

  • 担当:果樹試験場・育種部・ナシ・クリ育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

ニホンナシの育種において、これまで赤ナシについては早生から中生まで優良品種が育成されている。一方「豊水」に続いて収穫される品種として「新高」等が栽培されているが、果実品質の点で「豊水」よりはやや劣る。そこで、やや晩生の「162-29」と果実品質の優れる「幸水」との交雑を行い、果実品質の優れた、やや晩生の優良品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 昭和60年(1985)に「162ー29」(新高×豊水)に「幸水」を交雑して育成した。個体番号は「293ー25」である。平成3年(1991)に一次選抜し、平成4年度(1992)から「ナシ筑波47号」の系統名で第6回ナシ系統適応性検定試験に供試した。その結果、やや晩生の果実品質の優れた赤ナシであることが確認された。
  • 樹勢は強く、枝梢の発生密度は密である。短果枝の着生は中、えき花芽の着生は多い。つくばにおける成熟期は概ね9月中・下旬で「豊水」と「新高」の間に収穫され、収量は両品種と同程度である(表1)。黒斑病には抵抗性を示し、黒星病やその他の病害虫に対しては赤ナシの慣行防除で十分に対応できる。
  • 果実は扁円形で、果皮色は黄赤褐色である。大きさは500g程度であり、「新高」よりは小さいが、「豊水」より大果である。果肉硬度は4lbs程度で「豊水」並みである。糖度は12%程度で「豊水」と同程度である。果汁のpHは5.0前後で食味上酸味は感じられない。心腐れ、みつ症とも発生はみられない。日持ち性は、25°Cの室温下で10日前後であり、新高よりも短く、豊水程度である(表1)。有てい果の発生が多いが、無てい果との品質比較を行った結果ほとんど違いはみられなかった(表2)。
  • 系統適応性検定試験の結果をみると収穫期は8月下旬から10月中旬まで差がみられるが、9月下旬に成熟する地域が最も多い。果実重は336~570gである。果実肥大、揃いともに良好と多くの場所で評価された。硬度は3.1~6.7、糖度が11.8~14.3、pHが4.7~5.0で食味良好と評価する場所が多かった(表3)。

成果の活用面・留意点

本系統は、果実の外観、食味ともに優良な赤ナシである。これまで「豊水」に続いて収穫できる栽培性および品質ともに優れた品種がなかったことから、本系統の存在は有効であると考えられる。前年の短果枝から中果枝状の枝が発生し易いが、十分な花芽確保が可能であると考えられる。

具体的データ

表1.「ナシ筑波47号」の特性

表2.「ナシ筑波47号」の有てい果と無てい果の果実品質比較

表3.「ナシ筑波47号」の系統適応性検定試験結果

その他

  • 研究課題名:ナシ第6次育種試験、第6回ナシ系統適応性検定試験
  • 予算区分:経常研究期間  :平成9年度(昭和60年~9年)
  • 研究担当者:町田裕、壽和夫、佐藤義彦、阿部和幸、栗原昭夫、緒方達志、齋藤寿広、寺井理治、西端豊英、小園照雄、福田博之、木原武士、鈴木勝征