種子が少なく食べやすいキンカン新品種「ぷちまる」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

キンカン新品種「ぷちまる」は「ナガミキンカン」に「4倍体ニンポウキンカン」を交雑して育成した3倍体のキンカンである。極少核性で食べやすい。成熟期は1月で、果皮の甘味が強く食味良好である。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・遺伝資源研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

現在、経済栽培されているキンカン品種「ニンポウキンカン」は、種子が多く食べにくいことが改良すべき点である。そこで、有核で果実品質は劣るが、単胚性のため雑種の獲得が容易な「ナガミキンカン」を母親に、果実が「ニンポウキンカン」に比べてやや大きく、食味は比較的良いが、有核の「4倍体ニンポウキンカン」を父親にして交配を行い、種子が無くて食べやすく、食味が良いキンカンの育成を図った。

成果の内容・特徴

  • 1987 年(昭和62年)に果樹試験場興津支場(現カンキツ部興津)において、「ナガミキンカン」に「4倍体ニンポウキンカン」を交雑して育成した3倍体の品種である。1989 年(平成元年)にウンシュウミカンに高接ぎし、1990 年(平成2年)に初結実した。1992年(平成4年)に一次選抜し、同年4月からカンキツ第7回系統適応性・特性検定試験で検討してきた。
  • 果実は長球形で、育成地では 11g 内外であるが、沖縄県等の暖地では 20gに達する。果皮は濃橙色、厚さ4mm内外で、果皮歩合が高い。果皮はやや硬く、「ニンポウキンカン」と同程度で、「ナガミキンカン」よりやや柔らかい。果面は滑らかで 12 月~1月上旬に完全着色する。果肉は橙色で柔らかく、果汁量はやや少ない。果皮の甘味は強く、苦味はない。成熟期は1月で、果皮ごと食べる食味は良好である。しいなが1~2粒あるが、完全種子はほとんど無く食べやすい(表1、図1)。
  • 樹勢は中庸で、樹姿は中間である。短いとげが少しみられるが、樹勢が落ち着けば発生しなくなる。かいよう病には抵抗性があり、そうか病に対してもかなり強い(表1)。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は中程度である。

成果の活用面・留意点

  • 秋から冬にかけて温暖で、果実肥大の良好な暖地での栽培や施設栽培に適する。栽培適地である沖縄の特産物として特に期待されている。
  • 10日前後の間隔で3~4回開花するが、1番花の果実が最も肥大が良く、熟期が早い。遅く開花したものは果実が小さく未熟果となる。そのため、結果枝(春枝)の伸長、充実を図るとともに、開花期から幼果期にかけて園地の乾燥を防ぎ、1~2番花の結実を確保することが重要である。

具体的データ

表1 「ぷちまる」の樹性・果実特性

図1 「ぷちまる」の果実

その他

  • 研究課題名:早生カンキツ第6次育種試験
  • カンキツ第7回系統適応性・特性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 10 年度(昭和 62 年~平成 10 年)
  • 研究担当者:吉田俊雄、根角博久、吉岡照高、家城洋之、伊藤祐司、野々村睦子、上野勇、山田彬雄、村瀬昭治、瀧下文孝