花芽形成に関与するリンゴ AFL 遺伝子の単離と発現

要約

リンゴから単離した AFL 遺伝子は、モデル植物において花芽形成に重要なFLO/LFY遺伝子と相同である。リンゴ AFL 遺伝子の発現から、この遺伝子がリンゴの花芽形成に関与していることが推定される。

  • 担当:果樹試験場・リンゴ支場・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:生理
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

モデル植物のシロイヌナズナの花芽形成に関わる重要な遺伝子として FLO/LFY が単離されている。この遺伝子は、栄養成長から生殖成長への切り替えをする遺伝子群のひと つである。リンゴのような樹木においても同様な遺伝子が働いてい るものと考えられた。そこで開花制御や結実促進に資するため、FLO/LFY に相同な遺伝子の発 現をリンゴ花芽の茎頂部や組織別に調べた。

成果の内容・特徴

  • FLO/LFY に相同なリンゴの遺伝子を RT-PCR 法によって単離し、AFL 遺伝子と名付けた 。FLO/LFY 遺伝子との相同性は、アミノ酸で約 90% あり高い値を示した。
  • 「紅玉」果台から伸びた新梢の伸長は、6月下旬から7月中旬にかけて止まる。 この時期に栄養成長から生殖成長への転換が起こっていると考えられる。この茎頂部での AFL 遺伝子の発現を in situ Hybridization 法によって染色したところ( 図1 )、茎頂部が形態的に花芽に分化する直前に発現していることが明らかになった。この時期以 前には発現が認められなかった。また、葉原基も染色された。
  • 「紅玉」の花、実生、茎頂培養の葉からそれぞれ組織別に RNA を抽出し AFL 遺 伝子の発現をノーザン解析によって調べた( 図2 )。AFL 遺伝子は花器官では主にがくに、また、実生では成葉に、茎頂培養でも葉に強く発現 していた。実生の根には全く発現が見られなかった。
  • 「紅玉」の成葉からゲノム DNA を抽出し、制限酵素で切断後、AFL 遺伝子をプロ ーブとしてサザン解析を行った( 図3 )。各制限酵素処理でそれぞれ複数本のバンドが見られ、AFL 遺伝子が複数コピー存在してい る可能性が示された。

成果の活用面・留意点

AFL 遺伝子が FLO/LFY と同様に花芽形成部とともに葉で強い発現が見られた。また、ゲノム中にこの遺伝子が複数コ ピー存在する可能性が示されたことから、花及び葉、それぞれの分 化に複数の AFL 遺伝子が働いている可能性があり、花の分化に関わる AFL 遺伝子の同定には 更に検討が必要である。

具体的データ

図1 新梢茎頂部のin situ  Hybridization

図2 組織別のノーザン解析

図3 ゲノムサザン解析

その他

  • 研究課題名:リンゴ花芽形成遺伝子の解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 10 年(平成9年~ 11 年)
  • 研究担当者:和田雅人、古藤田信博
  • 発表論文等:「リンゴ FLORICAULA/LEAFY ホモログのクローニングと発現解析」,第 20 回日本分子生物学会,1997.
    「リンゴの花芽形成期における AFL 遺伝子の発現解析」,日本植物生理学会, 126, 1998 .