白紋羽病菌の PCR による特異的検出法

要約

根部に寄生性を有する6種ロセリニア属菌についてリボソーム RNA 遺伝子rDNA)の ITS 領域を増幅し、その塩基配列を比較・解析した。ついで、白紋羽病菌のみを検出し得るプ ライマーを設計し、PCR 法による特異的検出法を開発した。

  • 担当:果樹試験場・保護部・病害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:作物病害
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)は多くの果樹を含む樹木類の根を腐朽させ、枯死 にいたらしめる土 壌伝染性の糸状菌である。本菌はヨーロッパ、中東、アメリカ等世界中の温帯地域に広く分布 しており、ナシ、リンゴ、ブドウ、モモ、キウイフルーツ等の果樹 に発生する白紋羽病は大きな生産阻害要因となっている。近年、発病が疑われる樹や発病跡地 において、本菌の存在有無を確認するための特異的、かつ迅速な検 出・同定手段の開発が強く望まれていた。そこで、PCR 法を用いた本菌の特異的検出法を開発 しようとした。

成果の内容・特徴

  • 根部寄生性の6種ロセリニア属菌について、5.8 S リボソーム RNA をコードする遺伝 子を含む DNA を増幅し、その塩基配列を解析した。
  • 白紋羽病菌 R. necatrix と子実体の形態が類似している R. arcuata は、塩基配列 が互いに一致したことから、同種の可能性が高いと考えられた。
  • これら6種の塩基配列を比較検討して、白紋羽病菌のみを検出し得るプライマー を設計した。
  • 本プライマーを用いた PCR 法により、ロセリニア属菌のうち、R. necatrix R. arcuata のみが特異的に検出され( 図1 )、一方、ナシ根から分離した糸状菌はまったく検出されなかった( 図2 )。これらのことから、本法は白紋羽病菌の検出に有効であることが判明した。

成果の活用面・留意点

本菌は 43 科 63 属 170 種に及ぶ極めて広い宿主範囲を持つ病原菌である。このため、本菌 の特異的検出法は、本病の生態研究を始め診断・同定等に広く活用できる。

具体的データ

図1 ロセリニア属菌6種を用いた白紋羽病菌の検出例

図2 ナシ根から分離された糸状菌を用いた白紋羽病菌の検出例

その他

  • 研究課題名:白紋羽病に対する有用微生物等の探索及び作用機作の解明
    (2)白紋羽病菌の微量検出法の開発
  • 予算区分 :連携開発・超省力園芸
  • 研究期間 :平成 10 年度(平成9年~12 年)
  • 研究担当者:兼松聡子、大津善弘
  • 発表論文等:1)白紋羽病菌の rDNA ITS 領域の解析および検出用プライマーの設計, 日 植病報 64:342, 1998.(講要)
    2)白紋羽病菌の特異的検出法 (特許出願:平成 10 年5月 20 日 特願平 10-138388)