ウンシュウミカン摂取頻度と疾患罹病に関するロジスティック回帰分析

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要約

断面調査法による疫学調査データについてロジスティック回帰分析を行った結果、ミカンのシーズンである10月~2月の間にウンシュウミカンを毎日食べているグループでは、糖尿病・高血圧・心臓病・痛風罹病のオッズ比(リスク比の推定値)が有意に低い。

  • キーワード:ミカン、断面調査、生活習慣病、ロジスティック回帰分析、オッズ比
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部興津・品質機能研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(栽培)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ウンシュウミカンの摂取が生活習慣病罹病に及ぼす影響を明らかにするため、断面調査法による疫学調査結果についてロジスティック回帰分析を行い、ウンシュウミカンの摂取頻度別に各種生活習慣病罹病の多変量調整オッズ比を求めることにより検討した。ロジスティック回帰分析では、ある目的とする疾患について罹病の有無にどのような因子が影響しているか、また疾患の罹病に影響する関連因子を考慮した多変量調整オッズ比(罹病リスク比の推定値)を算出することができる。

成果の内容・特徴

  • 当研究所の一般公開及び清水・三ケ日・蒲郡の各JAで開催された農協祭に訪れた消費者を対象に、ウンシュウミカンの摂取頻度と健康状態について自記式アンケートによる断面調査を行ったところ6049名から有効回答が得られた。ウンシュウミカンの摂取頻度は男性よりも女性の方が有意に高く、高齢者ほど摂取頻度が高い(表1)。また、糖尿病等の生活習慣病の罹病率は高齢者ほど高い(表1)。
  • ロジスティック回帰分析の結果、糖尿病罹病の有意な関連因子として、年齢・性別・高血圧症・ミカン摂取量・BMI{Body Mass Index;体重(kg)÷身長(m)2}があげられた(表2)。これらの関連因子を独立変数、糖尿病罹病を従属変数として多重ロジスティック解析を行い、ミカンの摂取頻度別に多変量調整オッズ比を求めると、毎日摂取しているグループではオッズ比が有意に低い(表3)。
  • 多重ロジスッティク回帰分析の結果、性別・年齢・BMI等を調整した心臓病・高血圧・痛風罹病のオッズ比はミカンの摂取量が多いほど有意に低い(表3)。
  • 一方、高脂血症・肥満(BMI 26.4以上)罹病の多変量調整オッズ比は、ミカンの摂取量により差は認められない(表3)。

成果の活用面・留意点

  • ウンシュウミカンを多く食べることが、生活習慣病の予防に繋がる可能性が示唆され、健康維持・増進効果の面から果実消費拡大に有効な資料となる。

具体的データ

表1 性別・年代別にみたウンシュウミカンの摂取頻度と各疾患の罹病率

 

表2 ロジスティック回帰分析による糖尿病罹病の関連因子

 

表3  ミカン摂取量別にみた各疾患罹病の多変量調整オッズ比

その他

  • 研究課題名:日本産カンキツの健康増進効果‐ヒトでの実証
  • 予算区分:グリーンフロンティア食品成分の生体調節機能の解明と利用技術の開発
  • 研究期間:2000 ~ 2002 年度
  • 研究担当者:杉浦 実、松本 光、矢野昌充
  • 発表論文等:1)杉浦ら (2002) 治療 84:142-144
                      2)杉浦ら (2002) 果実日本 57号:78-80
                      3)杉浦ら (2002) 柑橘 1月号:26-32
                      4)杉浦・矢野 (2000) 第5回JSoFF学術集会要旨集:26
                      5)杉浦・矢野 (2001) 日本薬学会第121年会要旨集IV:175
                      6)杉浦ら (2001) 第6回JSoFF学術集会要旨集:37