RFLPマーカーによるカキの甘渋性の識別

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要約

  葉からDNAを抽出し、AFLP分析により得られたマーカー(EACC/MCTA-400)をプローブとしてRFLP分析を行うことによりカキ品種・系統の果実の甘渋性を識別することが可能である。

  • キーワード:カキ、甘渋性、DNA、RFLP、幼苗選抜
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

  日本原産の甘ガキには、種子が多くできた時だけ甘ガキとなる不完全甘ガキと、種子の有無にかかわらず甘ガキとなる完全甘ガキがある。カキ育種では優良な完全甘ガキ品種の育成が重要な目標である。
完全甘ガキの性質は遺伝的に完全劣性で、完全甘ガキ同士の交雑からは完全甘ガキのみが生じる。非完全甘ガキ(不完全甘ガキと渋ガキ)の在来品種間の交雑からは完全甘ガキは出現しない。非完全甘ガキと完全甘ガキとの交雑からも完全甘ガキが出現せず、その子に完全甘ガキを交雑させても15%程度しか完全甘ガキは得られない。そのため、完全甘ガキの育種では、広い変異を持つ非完全甘ガキ品種を交雑に利用することに大きな困難があった。
カキは播種から果実の結実までに5年以上を要する。非完全甘ガキを利用して完全甘ガキ品種を育成する場合、幼苗の葉を用いて甘渋性を識別できれば、育種の能率が大幅に向上する。そこで、葉のDNAによって果実の甘渋性を識別することをねらいとした。

成果の内容・特徴

  • 非完全甘ガキ性の遺伝子と連鎖するRFLPマーカーを開発した。葉のDNAを抽出したのち、制限酵素(HindIII)により消化し、AFLP分析により得られたマーカー(EACC/MCTA-400)をプローブとしてRFLP分析を行う。
  • このRFLPマーカーは甘渋性を支配する遺伝子座と連鎖している。非完全甘ガキ性遺伝子と連鎖する6.5kb及び8kbのバンドを1つでも持つ品種・系統は非完全甘ガキである。非完全甘ガキの「西村早生」に由来する交雑実生集団については完全甘ガキか否かを完全に識別できる(図1)。
  • 開発したRFLPマーカーにより、日本原産カキ品種についても完全甘ガキか否かを識別できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 非完全甘ガキと完全甘ガキの交雑によって生じた子に完全甘ガキを交雑させて得た実生集団において、RFLPマーカーにより非完全甘ガキを幼苗段階で淘汰することにより、完全甘ガキの選抜が大幅に効率化できる。
  • 「西村早生」以外の非完全甘ガキに由来する実生集団についての甘渋性識別の有効性については今後の検討が必要である。
  • 「カキ品種ごとにRFLP断片長に変異が認められる。
  • 中国原産の完全甘ガキ「羅田甜柿」は、甘渋性を支配する遺伝的機構が日本原産の完全甘ガキと異なるため、本法では甘渋性を識別できない。

具体的データ

図1.RFLP マーカーによる「西村早生」に由来する交雑実生の甘渋性の識別

 

図2.RFLP マーカーによるカキ品種の甘渋性の識別

その他

  • 研究課題名:カキ果実形質の遺伝様式の解明
  • 課題ID:09-02-04-*-22-04
  • 予算区分:交付金、文科省科研費
  • 研究期間:1997~2004年度
  • 研究担当者:神崎真哉(近畿大学)、米森敬三(京都大学)、杉浦 明(京都大学)、佐藤明彦、山田昌彦
  • 発表論文等:1)Kanzaki et al. (2000) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 69:702-704.
                      2)Kanzaki et al. (2001) J. Amer. Soc. Hort. Sci. 126:51-55.