大果で食味が良い中生のカキ新品種「太月」

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要約

新品種候補「太月」は「黒熊」に「太秋」を交雑して育成した渋ガキである。果実成熟期は「平核無」とほぼ同時期の中生である。単為結果力が高く、受粉樹が不要で、結実は安定している。収量性が高い。大果で肉質が軟らかく、多汁で食味が優れている。条紋が発生しやすい。炭酸ガス脱渋により脱渋する。

  • キーワード:カキ、新品種、渋ガキ、大果、良食味
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

主に栽培されているカキの品種は、「富有」、「次郎」、「平核無」およびそれらの枝変わり品種であり、カキ品種には広い多様性があるにもかかわらず、消費されているカキは少数の品種に限られている。特に、近年は「富有」や「平核無」の生産・消費が減少しつつあり、より食味が優れ、生産性の高い品種が望まれている。また、市場では大果のカキの評価が高い。そこで、大果で食味が優れ、収量性の高いカキの新品種の育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1993年(平成5年)に果樹試験場安芸津支場(現 農研機構果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点)において「黒熊」に「太秋」を交雑して育成した系統である。2002年(平成14年)から2006年(平成18年)まで系統番号「カキ安芸津20号」としてカキ第6回系統適応性検定試験に供試して検討を続けた結果、2007年(平成19年)1月の落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論を得た。
  • 果実の甘渋性は不完全渋ガキである。成熟期は中生で、「平核無」とほぼ同時期に成熟する(表1)。果形はやや扁平であり、果実重は著しく大きく「平核無」の約1.7倍で、育成地では平均447gとなる(図1、図2)。果皮色は橙黄色である。糖度は14.6%程度で、「平核無」とほぼ同程度である。適熟果の肉質はやや粗いが軟らかく、多汁で食味が優れる。炭酸ガス脱渋(CTSD脱渋:炭酸ガス100%・26℃で1日、その後、26℃の空気中で2日)により脱渋する。日持ちは短い。果頂裂果・へたすきはほとんど発生しない。条紋は発生しやすい。
  • 樹勢は強く、樹姿は開張する。雌花の着生は多い。雌花の開花期は「平核無」より 11日程度遅い。雄花は着生しない。単為結果力が高く、受粉樹は不要で、結実は安定している。収量性が高く、10aあたり3t以上の生産が可能と見込まれる。

成果の活用面・留意点

  • 年・場所により条紋が発生する。著しく条紋が発生した果実は軟化しやすく、脱渋には適さない。
  • 多く結実させても大果になり、樹勢も弱りにくい。しかし、糖度が低くなるため、食味がやや劣る。7月下旬の仕上げ摘果では、葉果比20程度以上とすることが適当である。

具体的データ

表1 「安芸津20号」の育成地(広島県安芸津)における特性(2005~2006年の平均値)

図1 「太月」の結実状況

図2 「太月」の果実

その他

  • 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1993~2006年度
  • 研究担当者:山田昌彦、佐藤明彦、三谷宣仁、岩波 宏、白石美樹夫、山根弘康、平川信之、上野俊人、
                      河野 淳、吉岡美加乃、中島育子