ニホンナシ黒星病抵抗性に連鎖するDNAマーカー

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ニホンナシ在来品種「巾着」の第1連鎖群中央部に位置する8種類のDNAマーカーは、黒星病抵抗性に強く連鎖し、黒星病抵抗性を持つ個体の選抜に利用できる。

  • キーワード:黒星病抵抗性、DNAマーカー、マーカー選抜、「巾着」、ニホンナシ
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ニホンナシ黒星病(病原菌Venturia nashicola)は、ニホンナシ栽培において最も問題になっている病害である。ニホンナシ経済栽培品種の中には黒星病に抵抗性を示すものは存在せず、在来ニホンナシ品種「巾着」、チュウゴクナシの一部、多くのセイヨウナシ等に抵抗性を示す品種が存在する。しかしながら、これら抵抗性品種の抵抗性が同じ遺伝子(座)に支配されているかどうかや遺伝子地図上の位置情報等は未だ断片的である。
ニホンナシ品種「巾着」の黒星病抵抗性(Vnk)の遺伝解析を行い、抵抗性座を連鎖地図上にマッピングして存在位置を明らかにするとともに、抵抗性に連鎖するDNAマーカーを取得する。開発したDNAマーカーにより黒星病抵抗性の早期選抜が可能となり、黒星病抵抗性を有するニホンナシ品種の育成が期待される。

成果の内容・特徴

  • 「秋麗」× 314-32(「巾着」×「豊水」)集団112個体に加え、「豊水」× 30-38(「筑水」×「巾着」)集団160個体(茨城県農業総合センター育成)の遺伝解析とマッピングから、8種類のDNAマーカーが黒星病抵抗性と強く連鎖する(図1)。
  • 黒星病抵抗性に連鎖する4種類のRAPDマーカーをSTS化したマーカー(STS-OPW2, STS-OPAW13, STS-OPO9, STS-OPAQ11、図1)、および取得した3種類のAFLPマーカーのうちの1種類をSTS化したマーカー(STS-CT/CTA)と、1種類のSSRマーカー(Hi02c07)が利用可能である。
  • 「巾着」の黒星病抵抗性は第1連鎖群中央部に位置している。
  • 「巾着」の黒星病抵抗性(Vnk)は、リンゴ黒星病抵抗性遺伝子Vf(図1中のCH-Vf2)と同じ連鎖群に存在するが、位置が異なっている。

成果の活用面・留意点

  • 本DNAマーカーは、「巾着」由来の黒星病抵抗性のDNAマーカー選抜に利用できる。
  • セイヨウナシやチュウゴクナシが有する黒星病抵抗性は、「巾着」の抵抗性と存在場所が異なるため、本DNAマーカーでは選抜することはできない。
  • STS-OPW2, STS-OPO9, STS-OPAQ11, Hi02c07は共優性マーカーであり、その他は優性マーカーである。

具体的データ

図1.巾着、バートレット、リンゴの第1連鎖群の連鎖地図

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:受託金(DNAマーカー)、交付金
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:山本俊哉、西谷千佳子、足立嘉彦、澤村豊、正田守幸、池谷祐幸、寺上伸吾(筑波大学大学院)、
                      郷内武(茨城農総セ)、霞正一(茨城農総セ)
  • 発表論文等:Terakami, Shoda, Adachi, et al. (2006) Theor Appl Genet 113(4): 743-752.