リンゴ台木における根頭がんしゅ病の抵抗性検定法確立と育種素材評価

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要約

根頭がんしゅ病菌液を付傷接種し、がんしゅ形成率を評価することで根頭がんしゅ病の抵抗性検定ができる。リンゴ台木の抵抗性を評価したところ、ミツバカイドウには抵抗性もしくは中位抵抗性を示す系統があることから抵抗性育種素材として利用できる。

  • キーワード:リンゴ台木、根頭がんしゅ病、病害抵抗性
  • 担当:果樹研・リンゴ研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

リンゴ果実生産の省力化、軽労化を目的として、わい化栽培の普及が進められている。わい化栽培には大量の苗木の供給が不可欠であるが、苗木生産現場においてわい性台木に高頻度で根頭がんしゅ病が発生した事例が報告されており、その対策が急務である。そこで、根頭がんしゅ病抵抗性わい性台木など対策技術を開発するため、根頭がんしゅ病抵抗性の評価手法を確立するとともに、抵抗性の遺伝資源を探索する。

成果の内容・特徴

  • 接木苗の新しょうの節間に濃度109 cfu/mLに調整した根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciens)懸濁液を注射器と針を用いて付傷接種することで根頭がんしゅ病の抵抗性検定を行う。この方法でリンゴ台木実生の地上部に接種した場合と、挿し木によって増殖した苗木の地下部に剪定鋏で傷を付け、同濃度の菌懸濁液に一晩浸漬して接種した場合それぞれの6ヶ月後のがんしゅ形成率は比較的高い正の相関を示す(図1)。このことから、地上部に根頭がんしゅ病菌を接種することで、地上部だけでなく地下部についても、根頭がんしゅ病に対する抵抗性検定ができる。
  • 接種によるがんしゅの形成率によって検定品種の抵抗性程度を抵抗性:形成率=0、中位抵抗性:0<形成率≦0.3、り病性:0.3<形成率、と判定した場合、ミツバカイドウの2系統は根頭がんしゅ病に対して抵抗性、もしくは中位抵抗性を示す。「G.65(別名:CG65)」は菌株ARAT-001に対して中位抵抗性を示す。その他の台木と菌株の組合せでは全て罹病性を示す(表1)。
  • ミツバカイドウ「サナシ 63」と「JM7」の後代実生個体群の抵抗性検定を行うと、菌株Peach CG8331に対しては抵抗性および中位抵抗性個体と罹病性個体とに大別できる(図2)。菌株ARAT-001に対する各個体のがんしゅ形成率は連続的な分布を示す(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 地上部を用いて抵抗性検定が可能であることから、挿し木による繁殖が困難な台木についても容易に抵抗性の検定ができる。
  • ミツバカイドウの系統は、根頭がんしゅ病抵抗性台木を育成するための母本として利用できる。
  • 抵抗性、中位抵抗性個体について根頭がんしゅ病菌の保毒の有無や、新たな感染源となり得るかどうかについて、今後、知見を得る必要がある。
  • 「JM7」×「サナシ63」の後代から根頭がんしゅ病抵抗性台木が選抜されることが期待される。選抜の際は、菌株によって個体の抵抗性が異なる場合があることに留意する。

具体的データ

図1 地上部と地下部のがんしゅ形成率の関係。菌株はPeach CG8331株。「JM7」×「サナシ63」のF1、21個体に接種した。

図2 「JM7」×「サナシ63」 F1集団119個体のがんしゅ形成率の分布。菌株はPeach CG8331株。

表1 根頭がんしゅ病菌の接種に対する地上部のがんしゅ形成率z

その他

  • 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e.4
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:森谷茂樹、岩波宏、高橋佐栄、古藤田信博、須崎浩一、阿部和幸
  • 発表論文等:Moriya et al. (2008) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 77(3):236-241