エチレン生成阻害剤と作用阻害剤の併用処理によるモモ果実の軟化抑制

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要約

モモ果実に対し、収穫後にエチレン生成阻害剤(AVG)とエチレン作用阻害剤(1-MCP)の両剤を併用処理すると軟化が抑制される。AVGは収穫7日前または1日前に処理しても収穫後に1-MCPを併用処理することによって同様の効果が認められる。

  • キーワード:モモ、軟化、日持ち性、AVG、1-MCP、エチレン
  • 担当:果樹研・果実鮮度保持研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

モモの果実は、成熟・老化に伴い果肉が急速に軟化するため、高品質果実の生産・流通を図るにはその抑制技術を開発することが重要である。これまでの研究により、モモの急激な軟化にはエチレンが関与しているが、果実のエチレン生成を抑制しても十分な軟化抑制効果が得られないことが報告されている。そこで、エチレン生成阻害剤(aminoethoxyvinylglycine,AVG)およびエチレン作用阻害剤(1-methylcyclopropene,1-MCP)の併用処理がモモの軟化に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • モモ「あかつき」の成熟果実に収穫後AVG溶液(150mg/L)を散布処理すると、エチレン生成が顕著に抑制される(図1)。一方1-MCP処理(1ppm,16時間)は2日後に一時的なエチレン生成の上昇が認められるが、その後は無処理の1/2程度に抑制される。両剤を併用処理した場合、2日後にややエチレン生成量の増加が認められるが、概ねAVGの単用処理とほぼ同様に推移する。
  • 収穫後の果肉軟化は、AVG処理のみでは抑制効果は大きくないが、AVG処理した果実に1-MCPを併用処理することによって顕著に抑制され、収穫9日後においても無処理に比べて有意に硬い(表1)。一方、1-MCP処理のみでは、処理直後は軟化が抑制されるが、効果は持続せず収穫7日後には無処理と同程度になる。
  • AVGと1-MCPが果肉硬度に及ぼす影響を二元配置分散分析を用いて解析すると、1-MCPは収穫4日後までの間の軟化抑制、AVGは収穫4日後以降の軟化抑制に寄与する(表1)。
  • AVG処理を収穫7日前または1日前に行っても、収穫後に1-MCPを併用処理することによって収穫4日後までは軟化抑制効果が認められる(表2)。
  • 以上のことから、AVGと1-MCPを併用処理することにより、モモ果実の軟化を顕著に抑制し、日持ち性を3日程度延長することが可能である。

成果の活用面・留意点

  • 我が国において実際に使用するためには両剤の農薬登録が必要となる。
  • AVGを収穫前に処理すると、成熟期が遅延する傾向がある。
  • モモ「川中島白桃」でも同様の傾向を示す。
  • モモ果実の軟化抑制技術を開発するための基礎的知見となる。

具体的データ

図1 収穫後のAVGおよび1-MCP処理がモモ「あかつき」果実のエチレン生成に及ぼす影響(貯蔵温度25°C)誤差線は標準誤差を示す.

表1 収穫後AVG処理および1-MCP処理がモモ果実「あかつき」の果肉硬度に及ぼす影響

表2 収穫前AVG処理および収穫後1-MCP処理がモモ果実「あかつき」の果肉硬度に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:果実の輸出等を促進する高品質果実安定供給のための基盤技術の開発
  • 課題ID:313-a
  • 予算区分:交付金プロ(果実等輸出)
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:羽山裕子、阪本大輔、立木美保、中村ゆり、樫村芳記
  • 発表論文等:Hayama et al. (2008)Postharvest Biol. Technol. 50: 228-230.