ブドウ「イタリア」から「紅高」への果皮色変異は新規の対立遺伝子VvmybA1BENによる

要約

ブドウ黄緑色品種「イタリア」から紫赤色品種「紅高」への果皮色変異は、アントシアニン生合成誘導機能のないVvmybA1a対立遺伝子が、レトロトランスポゾン下流へ挿入された配列によりVvmybA1BENとなり、機能を回復したことが原因である。

  • キーワード:ブドウ、枝変わり、果皮色
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 代表連絡先:電話0846-45-4754
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ブドウ黄緑色品種「イタリア」から赤色品種「ルビー・オクヤマ」への果皮色変異(枝変わり)は、アントシアニン生合成誘導機能のないVvmybA1a対立遺伝子に存在するレトロトランスポゾン(Gret1)の欠失により、機能のあるVvmybA1bが生じたことが原因である(平成16年度果樹研究成果情報)。紫赤色品種「紅高」は、「ルビー・オクヤマ」と同様に「イタリア」の枝変わりであるが、その変異機構は不明である。そこで、「イタリア」から「紅高」が生じた原因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • VvmybA1対立遺伝子のPCR増幅を行うと、「イタリア」からはVvmybA1aのみ、「ルビー・オクヤマ」からはVvmybA1aVvmybA1bが検出されるのに対し、「紅高」からはVvmybA1aと新規の対立遺伝子VvmybA1BENが検出される(図12)。
  • 「紅高」のゲノミック・ライブラリーからは、VvmybA1aVvmybA1BEN由来の2種類のゲノミック・クローンが単離される(図2)。VvmybA1BENには、Gret1VvmybA1との間に約600 bpの挿入配列が存在する(図2)。
  • RT-PCRによるVvmybA1の発現解析を行うと、「紅高」ではVvmybA1BEN由来のVvmybA1転写産物が検出される(図1)。これは、「紅高」におけるアントシアニン生合成誘導機能がVvmybA1BENで回復したことを示す(図2)。
  • VvmybA1BENにおける約600 bpの挿入配列には、ABA反応性のシスエレメントが2つ存在し(データ略)、これらがVvmybA1の転写の回復に関与した可能性がある。
  • 「ルビー・オクヤマ」果皮の主要アントシアニン色素はcyanidin-3-monoglucosideであるのに対し、「紅高」はpeonidin-3-monoglucosideであり、両品種のアントシアニン組成は明らかに異なる(データ略)。さらに、「紅高」ではアントシアニンのメチル化に関与するO-methyltransferaseの発現量が増加しており、組成の相違との関連が示唆される(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • ブドウ果皮色の制御機構の解明に向けた基礎的知見として有用である。
  • VvmybA1BENはアントシアニン生合成誘導機能のある新規の対立遺伝子であり、ブドウ育種において、VvmybA1BENをもつ「紅高」を交配親とした新たな着色系統の作出に利用できる。
  • VvmybA1BENとアントシアニン組成との関係については未解明である。

具体的データ

図1</a> 「イタリア」(It)、「ルビー・オクヤマ」(Ru)、「紅高」(Be)におけるVvmybA1対立遺伝子のPCR増幅(A、B)およびRT-PCRによるVvmybA1転写産物の検出(C)

図2 「イタリア」、「ルビー・オクヤマ」、「紅高」におけるVvmybA1遺伝子座のゲノム構造

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:213e.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006年~2009年度
  • 研究担当者:東 暁史、小林省藏、後藤奈美(酒類総研)、白石美樹夫(福岡農総試)、三谷宣仁、薬師寺博、児下佳子
  • 発表論文等:Azuma et al. (2009) Plant Sci. 176:470-478