クリ「ぽろたん」の受粉樹には「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」が適する

要約

「ぽろたん」の受粉樹には、収穫期が重複しない、あるいは外観で果実の分別が容易であり、開花期と交雑和合性の点で問題が無く、「ぽろたん」の渋皮剥皮性と果実重への影響が少ない「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」が適している。

  • キーワード:「ぽろたん」、受粉樹、交雑和合性、渋皮剥皮性
  • 担当:果樹・茶・ナシ・クリ等
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 研究所名:果樹研究所・品種育成・病害虫研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

クリは自家不和合性であり、栽培時に受粉樹の混植が必要である。「ぽろたん」の出荷時に他品種が混入すると、渋皮が剥けやすいという特性を活かした販売が難しくなる。このため「ぽろたん」と収穫期が重複しないか、外観での果実の分別が容易な混入の可能性が小さい品種を受粉樹とする必要がある。また、クリでは渋皮剥皮性や果実重が受粉品種により変動することが知られており、これらの形質に悪影響を与えないことも受粉樹の条件として重要である。そこで、国内の主要栽培品種および新品種の「美玖里」の中で「ぽろたん」に適した受粉樹を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「ぽろたん」と収穫期が重複しない品種は、「美玖里」、「石鎚」、「岸根」である。一方、「丹沢」、「国見」、「筑波」、「利平ぐり」、「銀寄」は収穫期が重複する(図1)。このうち、「利平ぐり」は、果皮色や果頂部の毛じの多少等の外観で「ぽろたん」と識別が可能であり、果実の分別が容易である。以上から、「ぽろたん」への混入の可能性が小さいと考えられる品種は、「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」である。
  • クリの受粉適期は、雌花の柱頭突出後7から26日後とされている。上記4品種の雄花の開花期間はいずれも「ぽろたん」の雌花の受粉適期と重複する(図2)。
  • 4品種を受粉品種とした場合の結実率は、いずれも50%以上となり、「ぽろたん」と交雑和合性が高い(表1)。
  • 「ぽろたん」の渋皮剥皮性は、4品種を受粉品種とした場合、いずれもチュウゴクグリ並みに良好である。また、果実重は、いずれも30g以上と大果である(表1)。
  • 以上のことから、「ぽろたん」の受粉樹には「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」が適する。

普及のための参考情報

  • 普及対象 クリ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
    国内のクリ生産地、平成21年現在の国内の「ぽろたん」栽培面積68.9ha
  • その他

具体的データ

図1 「ぽろたん」と受粉樹候補品種の収穫期

図2 「ぽろたん」の雌花の受粉適期受粉樹候補品種の雄花の開花期間

表1 受粉品種が「ぽろたん」の結実率、渋皮剥皮性、果実重に及ぼす影響

(高田教臣)

その他

  • 中課題名:高商品性ニホンナシ・クリ及び核果類の品種育成と省力生産技術の開発
  • 中課題番号:142a0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:髙田教臣、西尾聡悟、澤村豊、佐藤明彦、平林利郎、齋藤寿広、門脇伸幸(茨城園研)
  • 発表論文等:Takada et al. (2010) Acta Hort. 866:239-242