良食味で結実性が良好な晩生の完全甘ガキ新品種「太豊(たいほう)」

要約

「太豊」は、柔軟多汁で食味が優れる晩生の完全甘ガキ新品種である。単為結果性が高いため、受粉樹を混植しなくても安定した果実生産が可能である。

  • キーワード:カキ新品種、完全甘ガキ、晩生、高単為結果性、良食味
  • 担当:果樹・茶・ブドウ・カキ
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・ブドウ・カキ研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

現在、経済栽培されている完全甘ガキ品種は、「富有」および「次郎」とそれらの枝変わり品種や「太秋」などで、「富有」の生産が最も多い。「富有」の需要は低下しており、晩生の品質の優れた完全甘ガキ品種が求められている。しかし、「富有」は単為結果力が低く、種なし果は早期落果しやすく結実が不安定なため、受粉樹の混植が必要である。そこで、品質が優れ、「富有」より単為結果力が高く、受粉樹の有無にかかわらず安定生産できる晩生の完全甘ガキ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 1993年に農林水産省果樹試験場(現 農研機構果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点)において、やや晩生で高糖度のカキ興津20号に中生で良肉質な「太秋」を交雑し、得られた実生から選抜した。2008年から2013年までカキ安芸津25号としてカキ第7回系統適応性検定試験に供試して特性を検討し、2014年2月の同試験成績検討会において新品種候補とした。2014年6月11日に品種登録出願され、10月28日に出願公表された。
  • 樹勢は「富有」と同程度で、樹姿は開張と直立の中間である(表1)。展葉期、雌花の開花期は「富有」とほぼ同時期である。雌花の着生は多く、雄花は着生しない。早期落果は少なく、後期落果はない。果実の収穫期は11月中下旬で「富有」とほぼ同時期である。
  • 果実は336gと大きい。果皮色は、カラーチャート値6程度である(表1、図1)。糖度は16%程度で「富有」並みである。適熟果の肉質の粗密は中程度で、「富有」より果肉硬度が低くサクサクとした食感を有し、果汁も多いため、食味良好である。果頂裂果性はなく、へたすき性は「富有」と同程度である。汚損果の発生はほとんどが軽微な破線状汚損による。日持ち性は「富有」並みに長い。
  • 花粉遮断した果実の結実率は90%以上であり、「富有」の結実率が低い年でも「富有」よりかなり高い(表2)。そのため「太豊」の栽培には受粉樹が不要であり、種なし果生産も可能である(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:カキ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北以南の「富有」生産地で栽培が可能であるが、徳島県、愛知県、和歌山県、兵庫県といった地域で早期の普及が見込まれる(許諾苗木生産者数13県、47業者)
  • その他:苗木販売は2015年秋季から開始予定。夏秋期の気温が高い地域に適応するが、年次や場所によりわずかに渋残りが生じることがあり、「富有」より栽培適地はやや狭いと見込まれる。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:高商品性ブドウ・カキ品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1993~2014年度
  • 研究担当者:佐藤明彦、山田昌彦、河野淳、三谷宣仁、山根弘康、岩波宏、上野俊人、白石美樹夫、伴雄介、平川信之、尾上典之、吉岡美加乃、中島育子
  • 発表論文等:佐藤ら「太豊」 品種登録出願第29280号 (2014年10月28日出願公表)