寒地のモデル湿地における硝酸態窒素浄化能に及ぼす水温の影響

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要約

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地地力研究室
  • 連絡先:011-857-9237
  • 部会名:草地・生産管理
  • 専門:環境保全
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

酪農地帯を起源とする河川の汚染を防止するための方策のひとつとして、湿地による浄化が期待される。そこで釧路湿原周辺河川に農用地から流入する排水路のモデルとして、北農試のグライ低地土の水田に長さ44m、幅4~6mとするイネ、ヨシおよび無植生からなるモデル湿地を設置し、無肥料で栽培しつつ水口から水尻へ流量7~80L/minでかけ流した水の硝酸態窒素除去量を浄化量とみなし、7月から12月までの浄化量を測定した。この場合の硝酸態窒素流入量は平均0.85mgN/L(CV:76%)(イネ区),硝酸態窒素負荷量は256mgN/m2/日(イネ区)~429mgN/m2/日(無植生区)であった。

成果の内容・特徴

  • 7月から10月における湿地の硝酸態窒素(NO3-N)浄化量は窒素流入量や植生によって大きく変動する(図1)。
  • 浄化量を平均値でみるとイネ区で80~90mgN/m2/日、ヨシ区では8月下旬までは110mg程度であるがその後急激に減少し、無植生区では80~130mgであり、必ずしもイネやヨシの植生区で浄化量が大きいわけではない(図2)。なおこの期間の植物体地上部による窒素吸収量はイネ区8.2gN/m2、ヨシ区5.5gN/m2である。
  • 浄化量はいずれの区でも夏に高く秋から冬にかけて低下する(図2)。この原因として水温の低下が考えられる。
  • とくにヨシ区やイネ区では植物体による水面の遮蔽度が無植生区より高く、これが日中の水温上昇を抑制した結果(図4)、浄化量の抑制に結びついたと推定される。
  • 10月下旬以降は水温の低下に伴って浄化量が徐々に低下し(図1)、浄化量は水温の影響を受けて変動し、浄化は5~6°C程度まで認められる(図3)。
  • これらの結果から、寒地における湿地の浄化能は温暖期には100mgN/m2/日程度であり、低温期には水温の影響が大きく、通過水温が5~6°C程度まで浄化が認められる。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は北海道等の寒地における湿地の浄化量を推定する際の参考となる。
  • 浄化の機構については今後の検討課題である。

具体的データ

図1.湿地の硝酸態窒素浄化量 図2.植生別・期間別の硝酸態窒素浄化量平均値

 

図3.10月以降における各区水尻の水温と浄化量の関係 図4.11月30日における流入およびヨシ区・無植生区の水尻水温および外気温の日内変化

 

その他

  • 研究課題名:緩衝帯としての湿地の浄化機能の解明(平成5~7年)
  • 予算区分:公害防止
  • 研究期間:平成7年度(平成5~6年)
  • 発表論文等:湿地の浄化機能、土肥誌講演要旨集41、268(1995)