条間を表層砕土する仕切り方式の部分耕ロータリ

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要約

ロータリに耕深の異なる耕うん爪を交互に取り付け、各条の側方に土の付着の少ない樹脂板で仕切りを設け、後部をそれぞれ独立に鎮圧の強さを調整できる鎮圧カバーで覆った部分耕ロータリによって、条間を浅耕して前植生を一掃しながら、砕土性の高い播種床を造成できる。

  • キーワード:ロータリ、耕うん、部分耕、播種、大豆
  • 担当:北農研・総合研究部・農業機械研究室
  • 連絡先:電話011-857-9265、電子メールkeich@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大規模な稲、麦、大豆等の水田輪作体系の定着と安定化を図るためには、省力的で高能率な耕うん・施肥・播種の同時作業技術の開発が求められるが、転換畑では播種床の砕土性が不十分なため播種精度が低下し、出芽、初期生育の安定を図るのが難しい場合が多い。そこで、ロータリの爪の各条の側方を樹脂板で仕切り、後部を鎮圧カバーで独立に覆って耕うんした土を密閉して複数回耕うんすることにより播種床の砕土率を高め、さらに条間を浅耕のロータリ爪により表層砕土して膨軟に堆積することで植生の一掃と作物の初期生育における雑草の抑制が図れる部分耕ロータリを開発する。

成果の内容・特徴

  • ロータリの爪を図1のように播種床の部分耕うん用の深耕爪と条間の浅い耕うん用に浅耕爪を交互に配して、間に土の付着の少ない樹脂板で仕切りを入れ、後部をスプリングで鎮圧の強さを調整できる鎮圧カバーでそれぞれ独立に覆うことにより、砕土率の高い播種床の造成ができる。
  • 播種床は図2のように幅9cm、耕起深さ12~16cm(規定輪により調節可能)、条間25cmで部分耕うんし、仕切り板で密閉された領域の中でロータリ爪によって複数回耕うんされるため、図3のように土の砕土率が向上する。条間は6cmの浅耕のロータリ爪により表層を粗く砕土し、前植生を一掃できる。
  • 現地の転作田における耕うん試験の比較では、土壌含水比が18~28%の範囲では、平均土塊直径は出芽率が80%以上とされる1.2cm以下とすることができ、耕深6.4cmのアップカット浅耕ロータリと同等かそれ以上となった。しかし、水分が30%以上では砕土率が極端に低下した(図3)。
  • 作業速度は通常の土壌条件であれば4.5km/h程度(95PSトラクタ、PTO回転数540rpm、エンジン回転数2200rpm)である。
  • 部分耕により作業を行なうため、表層砕土の部分の未耕起部分で地耐力が確保され、その後の作業において、雨天後でも圃場に作業機が入ることができる。

成果の活用面・留意点

  • 本機は、施肥播種機と組み合わせて部分耕うん・施肥播種・鎮圧同時作業として稲、麦、大豆等の省力、高能率播種作業機として用いる。
  • 排水不良の圃場や重粘土質の圃場では、心土破砕を施工するなど排水対策や耕盤破砕を行う。

具体的データ

図1 条間表層砕土仕切り方式の部分耕ロータリの 前方から見た爪配列 図4 部分耕ロータリに高精度播種機を連結し た大豆播種作業の様子

 

図2 仕切り方式の部分耕ロータリの部分耕 うん部と表層砕土部分の形状と砕土状況 図3 異なる土壌含水比での仕切り方式の部分耕 ロータリ(耕深12cm、作業速度3.4km/h)とアップ カット浅耕ロータリ( 耕深6.4cm 、作業速度 1.8km/h)、心土破砕ロータリ(耕深15cm、作業速 度1.8km/h)の砕土性(平均土壌直径)の比較(転 換初年目の現地試験圃場、灰色低地土、および泥 炭土)

 

 

その他

  • 研究課題名:マルチシーディング技術の開発
  • 予算区分:マルチシーディング
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:井上慶一、村上則幸、宮浦寿美、渡辺治郎、大下泰生、湯川智行