現存量と被食量から見た放牧草地における施肥の考え方

要約

放牧草地の年間施肥量は、放牧圧に応じて地域ごとに定まる年間の養分補給量を基本とする。また、草量確保に要する養分量の過不足を牧区ごとの土壌診断等によって評価し、修正に必要な施肥量を算出する。この両者を加えて放牧草地の年間施肥量とする。

  • キーワード:現存量、被食量、放牧草地、施肥
  • 担当:北農研・畜産草地部・草地生産研究室
  • 連絡先:電話011-857-9235、電子メールsyun@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

集約放牧の導入によって、省力管理や高位生産など放牧利用の目的が広がり、草地管理技術も多様化してきた。しかし、現在、北海道施肥標準による草地の施肥体系では、放牧方法や放牧圧等、放牧草地特有の管理条件が施肥管理に反映されていない。そこで、多様な放牧利用に対応できる放牧草地の施肥指針の策定に向けて、基本的な考え方を整理する。

成果の内容・特徴

  • 多様な放牧利用に対応できる放牧草地の施肥指針を策定するため、草地の養分現存量と年間の養分補給量という2つの指標を用いる。
  • 草地の養分現存量は、放牧草地の草量を確保するために必要な養分量であり、地上部の牧草に含まれる養分量を調査することにより、間接的に推定できる。
  • 地上部養分現存量は利用時の草丈に強く影響される(図1)。このことから、放牧草地の草量を確保するために必要な養分量は、利用時の草丈が長い放牧方法では多く、短い時には少なく設定する。この量の過不足評価とその修正は、土壌診断や作物栄養診断等によって行う。
  • 年間の養分補給量は、放牧草地からの養分収奪を補う量である。肥料養分は、放牧家畜によって草地から持ち出されるが、一部は、糞尿の排泄には草地に還元される。この差し引き量を肥料で補給する。この値は、採食された牧草に含まれる養分量(養分被食量)を調査することにより、間接的に推定できる。
  • 年間の養分被食量は、延べ放牧頭数に強く影響される(図2)。このため、放牧草地への養分補給量は放牧圧の高い草地では多く、低い草地では少なく設定する。また、この養分補給量は放牧圧と放牧期間が決まれば推定可能である。
  • 以上により、放牧草地における施肥対応は、以下の流れで整理できる(図3)。
    1)地域と放牧圧に基づいて年間の養分補給量を算定する。
    2)土壌診断や作物栄養診断などの結果から、草量確保に必要な養分現存量の状態を評価し、その過不足を修正す
      るために必要な施肥量を算定する。
    3)上記の年間養分補給量と養分現存量の過不足の修正に要する施肥量を加え、放牧草地における年間施肥量とす
      る。

成果の活用面・留意点

  • 多様な放牧草地における施肥対応策定の指針となる。

具体的データ

図1.利用時の草丈と地上部現存量の関係

 

図2.延べ放牧頭数と年間の被食量の関係

 

図3.放牧草地における施肥対応の考え方

その他

  • 研究課題名:北海道における持続型放牧草地の植生管理技術の開発
  • 予算区分:経常・畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間:1997~2000年度
  • 研究担当者:三枝俊哉、手島茂樹、小川恭男、高橋俊
  • 発表論文等:1)三枝ら (2002) 日草誌 48(4):346-351.