集約放牧における搾乳牛の放牧草採食量と草量との関係
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要約
集約放牧による短草利用でメドウフェスクとペレニアルライグラス放牧草のTDN含有率が70%程度に維持されるとき、搾乳牛の放牧草採食量は両草種間でその差が小さく、草量が大きく影響する。
- キーワード:牧草、乳用牛、放牧、採食量、メドウフェスク、ペレニアルライグラス
- 担当:北海道農研・畜産草地部・放牧利用研究室
- 連絡先:電話011-857-9313、電子メールksudo@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
搾乳牛の放牧草採食量には多くの要因が影響するとされる。また、草質の低下を伴うと草量の増加が放牧草採食量の向上に必ずしも結びつかな
いとの報告がある。そこで、放牧草のTDN含有率を高く維持できるメドウフェスク(MF)またはペレニアルライグラス(PR)の短草利用草地に搾乳牛を昼
間1日輪換放牧し(夜間は1牧区制永年草地を共用し放牧)、放牧草採食への草量、補助飼料摂取量、乳量の影響を評価するとともに、両草種間の差を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 約180日の放牧期間平均で、放牧草のTDN含有率が70%程度に維持され、併給飼料摂取量(乾物)が1.64kg/体重100kg/日のとき、放牧草採食量(乾物)は1.75(昼間1.41、夜間0.34)kg/体重100kg/日を示す(表1左列)。
- 放牧草採食量はその81%が摂取されたMFまたはPRの昼間草地における草量との関係が深い(表1右列)。重回帰式で放牧草採食量を推定する際に有効な要因は、昼間および夜間草地の草量と併給飼料摂取量で、乳量や高水準に維持された放牧草のTDN含有率は推定に必要な要因に選ばれない。また、併給飼料摂取量など乳量以外の要因の影響を除くと、放牧草採食量に乳量は影響しない。
- 集約放牧を行ったMFまたはPRの昼間草地では、割り当て草量(体重100kg当たり草量)が放牧草採食量と放牧草からのTDN摂取量に大きく影響する(図1、表2)。両草種間の差は前者でわずかであり、後者では認められない(表2)。
- 以上の結果より、草質が高く維持されるMFまたはPR集約放牧草地で放牧草採食量を向上させるためには、(割り当て)草量の確保を重視する必要がある。
成果の活用面・留意点
- MFまたはPRが越冬可能な地帯で短草利用(草丈でMF30cm、PR20cm程度)を行う場合に活用できる。
- 本成果はha当たり放牧頭数2頭とした春分娩牛4頭1群の測定値・平均値から得られたものである。供試牛の推定305日乳量は約9000kg、摂取TDN量の構成は放牧期間平均で放牧草:併給粗飼料:濃厚飼料=5:1:4である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:乳牛放牧に適した草種の特性解明と利用技術の開発
- 課題ID:04-05-04-*-07-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1998~2003年度
- 研究担当者:須藤賢司、落合一彦、池田哲也、梅村和弘、小川恭男、渡辺也恭
- 発表論文等:1)須藤ら(2002)日草誌48(4):352-357.