自給粗飼料給与時における乾乳牛の代謝エネルギー要求量の推定

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要約

自給粗飼料の代謝エネルギー含量は、トウモロコシサイレージが高い。自給粗飼料給与時における乾乳牛の維持に要する代謝体重当たりの代謝エネルギー要求量は、596KJ/kg0.75と推定される。

  • キーワード:自給粗飼料、エネルギー価、代謝エネルギー、乳牛
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・飼料評価研究室
  • 連絡先:電話011-857-9236、電子メールkume@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

乳牛の生産性向上と飼料自給率の向上のためには、粗飼料のエネルギー価とともに乳牛のエネルギー要求量の精密化が求められる。しかし、わ が国では自給粗飼料の代謝エネルギー(ME)含量や乳牛の維持に要する代謝エネルギー要求量に関するデータが少なく、特に北海道で栽培されている粗飼料中 のME含量を評価した事例はほとんどない。
そこで、北海道地域の代表的な自給粗飼料であるチモシー、オーチャードグラス、アルファルファおよびトウモロコシサイレージを単独あるいは組み合わせて計 32回の乾乳牛のエネルギー代謝試験を実施し、自給粗飼料のエネルギー価と乾乳牛の維持に要する代謝エネルギー要求量を評価する。

成果の内容・特徴

  • 粗飼料の可消化養分総量(TDN)およびME含量とエネルギーの消化率(DE/GE)および代謝率(ME/GE)は、トウモロコシサイレージが最も高く、ついでイネ科牧草(オーチャードグラスおよびチモシー)、アルファルファの順である(表1)。
  • 総エネルギー(GE)摂取量に対するエネルギー損失量の比率は、熱発生量と糞によるエネルギー損失量が多く、ついでメタン、尿の順である。トウモロコシサイレージ給与牛では、他の自給粗飼料給与牛よりも熱発生量とメタンによるエネルギー損失量の比率が高い(表1)。
  • 粗飼料の代謝エネルギー含量(Y)と酸性デタージェント中リグニン(XADL)あるいは酸性デタージェント(XADF)含量間には高い負の相関関係が認められ、飼料中のADL含量あるいはADF含量から精度良く粗飼料の代謝エネルギー含量を求めることが可能である。
     Y= -0.413XADL+12.3 (n=32、R2=0.55)
      Y= -0.115XADF+13.8 (n=32、R2=0.32)
  • 代謝エネルギー摂取量とエネルギー蓄積量の回帰式からエネルギー蓄積量が0になる時点を維持に要する代謝エネルギー要求量とみなすと、乾乳牛の維持に要する代謝エネルギー要求量は596KJ/kg0.75と推定される(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 乳牛の栄養管理における基礎データとして活用できる。
  • 本成果は乾乳牛を用いたものであり、自給粗飼料多給時における泌乳牛の代謝エネルギー要求量についてはさらに検討することが必要である。

具体的データ

表1.自給粗飼料のエネルギー含量

 

図1,乳牛の代謝エネルギー摂取量とエネルギー蓄積量の関係

 

その他

  • 研究課題名:粗飼料多給時における乳牛からのメタン・窒素・リン排泄量低減技術の開発
  • 課題ID:04-05-02- *-10-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:久米新一、野中和久、大下友子
  • 発表論文等:
    1)Kume(2002) Greenhouse Gases and Animal Agriculture. 87-94.
    2)久米・野中・大下 (2003) 北海道農研研報 178:21-34.
    3)久米・野中・大下・山口 (2004) 日本畜産学会報 75:31-35.