コムギ blue grain 品種の全粒粉の持つ抗酸化活性および種子休眠性

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要約

コムギblue grain 品種のアリューロン層には抗酸化物質であるアントシアニンが含まれており、全粒粉の配合によりパンの抗酸化活性が向上する。また、blue grainの形質の導入により種子休眠性が高まる。

  • キーワード:コムギ、アントシアニン、blue grain、抗酸化活性、全粒粉、種子休眠性
  • 担当:北海道農研・地域基盤研究部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話011-857-9478、電子メールiriki@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・流通利用
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

コムギ品種には blue grainと呼ばれる、種子のアリューロン層(種皮と胚乳の間に位置する層)に、抗酸化活性などの機能性があるアントシアニンを蓄積するものがある。アリューロン層は全粒粉に含まれ、全粒粉は健康志向の高い消費者に好まれていることから、blue grain 品種を用いて小麦全粒粉の機能性を高めることにより新たに需要が拡大されると期待される。そこで、blue grain 品種の全粒粉の抗酸化活性、小麦粉へ配合した場合のパンにおける抗酸化活性を検討する。また、コムギでは種皮色は種子休眠性と関連があり、ポリフェノール含量が高い赤色粒は白色粒に比べて休眠が強い傾向にある。アントシアニンはポリフェノールの一種であるため blue grainの形質は種子休眠性に影響を及ぼすことが予想される。そこで、blue grain を導入した系統の種子休眠性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 札幌でのblue grain 品種(Sommer Berlin 他6品種)の全粒粉のアントシアニン含量の品種間差は108~286μg/gであり、これらを を札幌、芽室、訓子府、つくば、福山、筑後で栽培することにより同含量の差異は68~371μg/gと大きくなり、blue grain 品種のアントシアニン含量には環境要因による変動がある。
  • 異なる栽培地で収穫したblue grain 7品種のメタノール抽出溶液の抗酸化活性は、アントシアニン含量との間に正の相関がある(図1)。
  • blue grain 品種(UC66049)の全粒粉を市販粉と30:220の割合でブレンドしてパンに加工することにより、春播コムギ品種「ハルユタカ」の全粒粉をブレンドした場合よりも抗酸化活性の高い製品が得られる(表1)。
  • blue grain 品種「Blue Dark」に春播コムギ品種「ハルユタカ」を戻し交雑したBC7F4世代種子では、「ハルユタカ」に比べて全粒粉のメタノール抽出溶液の抗酸化活性が高い。また,「ハルユタカ」に比べて種子休眠性も高い(表2、図2)。

成果の活用面・留意点

  • blue grain の形質を利用し抗酸化活性の高い小麦全粒粉として新たな機能性小麦粉食品の開発が期待される。
  • blue grain の形質は種子休眠性を高めることから、穂発芽耐性の向上が期待できる。
  • blue grain 品種では、アントシアニンはアリューロン層に含まれるため、通常の製粉ではふすまとして排出され、小麦粉にはアントシアニンが含まれない。そのため、全粒粉として利用する必要がある。

具体的データ

図1. blue grain 品種の全粒粉のアントシアニン含量とメタノール抽出溶液の抗酸化活性の相関

表1. 全粒粉配合小麦粉加工品の抗酸化活性

表2. ハルユタカ/Blue Dark BC7F4種子の全粒粉のメタノール抽出溶液の抗酸化活性

図2. ハルユタカ/Blue Dark BC7F4種子の休眠性

その他

  • 研究課題名:小麦種子のアントシアニンの機能性の解明
  • 課題ID:04-08-01-*-02-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2004年度
  • 研究担当者:入来規雄