小麦粉中のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性の簡易評価法

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要約

培養試験管、L-DOPA試薬及び色彩色差計を用いることにより、小麦粉中のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性を簡易に評価することができる。

  • キーワード:小麦粉、PPO活性、簡易評価法、L-DOPA
  • 担当:北海道農研・畑作研究部・麦育種研究室
  • 連絡先:電話0155-62-9210、電子メールmiwako@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性は様々な食品の変色に関与していることが知られており、小麦粉製品に関しても、日本めん や中華めんの変色に関与していることが報告されている。PPO活性の測定法としては、酸素電極を用いる方法や、一定時間酵素を反応させ、吸光度の変化を測 定する方法があるが、いずれも、多数の材料を迅速に測定するのは困難である。そこで、めん色の変化の少ない系統の選抜に利用するためのPPO活性の簡易評 価法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ビューラー式製粉機で得られた60%粉中のPPO活性は灰分や蛋白含量に比べ、中華めん生地の明るさ及び赤みの変化量との相関が高く、PPO活性が高いほど変化量が大きい(表1)。
  • 全粒粉のPPO活性の簡易測定法としてL-DOPA(3,4-Dihydroxy-L-phenylalanine)法(Anderson and Morris,2001)があるが、60%粉のPPO活性と中華めん生地色の変化量との相関係数は全粒粉より高く、特に赤みとの相関が高い(表2)。
  • 小麦粉中のPPO活性の簡易評価は以下の手順で行う。平底の培養試験管(直径約2.5cm)に60%粉0.2gを入 れ、L-DOPA法と同様の試薬を調製し(10mM L-DOPA、50mM MOPSをNaClでpH6.5に調製)、4ml加える。1時間振とう後、 室温に放置し、18時間後に色彩色差計(Minolta CM-3500d、測定径 0.8mm)を用い、試験管底面のL*を測定する(図1)。
  • 簡易評価法によるL*値と酸素電極を用いたPPO活性の実測値との間には高い相関関係が認められる(r=-0.94***)(図2)。従って、この手法により、PPO活性を評価できる。

成果の活用面・留意点

  • 小麦の育種場面で、PPO活性の簡易評価に活用できる。
  • L-DOPA及びMOPSは有毒なので、取り扱い及び廃液処理に注意し、反応中はドラフト内に置くのが望ましい。
  • 試験を行う前に、使用する培養試験管に4mlの蒸留水を入れた状態で測色し、他の試験管と比べて極端に値が異なるものは除外する。

具体的データ

  表1 60%粉の成分と0~72時間後の中華めん生地色の変化量との相関係数(n=20) 図2 簡易評価法によるPPO活性の評価値とPPO活性実測値との関係

表2 全粒粉および60%粉のPPO活性と中華めん生地色の相関係数(n=17)

 

図1 PPO活性簡易評価法の手順

 

その他

  • 研究課題名: 寒地向けパン・中華めん用良色相小麦の早期選抜
  • 課題ID: 04-03-02-*-31-05
  • 予算区分: ブラニチ1系
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 伊藤美環子・西尾善太・田引 正・高田兼則