リパーゼ活性はソバ粉の脂質劣化に重要な役割を果たしている

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要約

ソバ粉貯蔵中の脂質劣化には、脂質分解・酸化酵素の中でも、リパーゼ(トリアシルグリセロールリパーゼ)活性が重要な役割を果たしている。

  • キーワード:ソバ、ソバ粉、リパーゼ、劣化、脂質、酵素
  • 担当:北海道農研・畑作研究部・遺伝資源利用研究室
  • 連絡先:電話0155-62-9273、電子メールtsuzu@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物、作物・夏畑作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ソバ粉は製粉後に非常に貯蔵劣化しやすい。劣化の主な原因は遊離脂肪酸の増加や酸化であり、それには脂質分解・酸化にかかわる酵素 反応が重要な影響を与えていると考えられている。しかし、それら酵素のうちどれが重要か不明なため、ソバ粉が劣化しにくい品種の育成は難しい。そこで食品 の代表的な脂質分解・酸化経路(図1)の酵素群について14品種系統を用いて品種間差を明らかにし、ソバ粉貯蔵試験により脂質劣化に重要な役割を果たしている鍵酵素を明らかする。そして、その酵素を精製し、育種操作の際に重要な情報であるアイソザイムの有無を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ソバ粉中のリパーゼ、リポキシゲナーゼ、パーオキシダーゼ活性には品種間差が認められる(表1)。
  • 5℃・暗黒化・ポリエチレンバッグ(大気を充填)内にて4、10、30日間貯蔵試験を行ったところ、リパーゼ活性は貯蔵初期から脂質劣化指標(pH、水溶性酸度)との相関が高く、中性脂質の分解に重要な役割を果たしている(表2)。
  • リポキシゲナーゼ、パーオキシダーゼ活性と、劣化指標の間には明確な関係が認められない(表2)。
  • キタワセソバのソバ粉のリパーゼには、少なくとも2つのアイソザイムが存在する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • リパーゼ活性の低い系統はタンパク質含量も低い傾向にあったので、選抜時には注意が必要である。

具体的データ

図1 脂質劣化過程に関与する酵素群

 

表1 ソバ14品種系統におけるリパーゼ、リポキシゲナーゼ、パーオキシダーゼの品種間差

 

表2 ソバ粉の脂質劣化指標と酵素の相関行列

 

図2 キタワセソバ粉のリパーゼアイソザイムの銀染色像

 

その他

  • 研究課題名:高品質・機能性成分向上のための育種技術および高品質そば品種の開発
  • 課題ID: 04-03-02-04-38-05
  • 予算区分: ブラニチ4系
  • 研究期間: 2003∼2005
  • 研究担当者: 鈴木達郎、六笠裕治、本田 裕
  • 発表論文等:
    T. Suzuki, Y. Honda and Y. Mukasa 2004. J. Agric. Food Chem. 52, 7407-7411.
    T. Suzuki, Y. Honda, Y. Mukasa and S. Kim, 2005. J. Agric. Food Chem. 53, 8400-8405.