北海道地域での栽培に適する巨大胚水稲新品種「ゆきのめぐみ(旧系統名 北海299号)」

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要約

「ゆきのめぐみ」は、北海道での出穂期および成熟期は中生の早で、一般品種に比べて2倍弱胚芽が大きい北海道向きの巨大胚粳系統である。γ-アミノ酪酸(GABA)含量が高く、発芽玄米や胚芽精米としての利用が期待できる。

  • キーワード:水稲、巨大胚、γ-アミノ酪酸、発芽玄米、胚芽精米
  • 担当:北海道農研・特命チーム員(低コスト稲育種研究チーム、米品質研究チーム)
  • 連絡先:電話 011-857-9260、電子メール seikajouhou@ml.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・水田・園芸作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

米政策改革大綱により、地域独自の特色をもった消費者重視・市場重視の「売れる米づくり」への転換が求められている。また、消費者の健康志向の高まりから、機能性食品への関心は高く、機能性成分のγ-アミノ酪酸(GABA)などが多い発芽玄米の販売は好調である。
これまでに巨大胚品種としては「はいみのり」、「めばえもち」、「恋あずさ」、「はいいぶき」が育成されてきており、一般品種よりGABAが多い特長をいかした発芽玄米等に利用されている。これらの品種は東北以南向きの品種であり北海道では栽培できない。そこで、北海道産の機能性米として新たな需要を開拓することを目的に北海道での栽培に適した巨大胚品種の育成を行う。

成果の内容・特徴

  • 水稲「ゆきのめぐみ」は、「ゆきひかり」の種子ガンマ線照射後代から育成された巨大胚系統である。
  • 育成地における出穂期および成熟期は「きらら397」並の“中生の早”である(表1)。
  • 穂ばらみ期耐冷性は「きらら397」よりやや強い“強”である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、いもち病圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちとも“やや弱~中”である(表1)。
  • 収量性は、「きらら397」よりやや低く、「ほしのゆめ」と同程度である(表1)。
  • 発芽玄米単品の食味総合評価は「ほしのゆめ」にやや劣るが、白米への発芽玄米ブレンド率が50%以下の場合「ほしのゆめ」との差はない(表1)。
  • 胚芽の重量は「きらら397」「ほしのゆめ」の2倍弱である(表1)。
  • 玄米の水浸漬後のGABA含量は「ほしのゆめ」の約1.7倍である(表2)。胚芽精米のGABA含量は「ほしのゆめ」の約2.4倍、ビタミンE含量は「ほしのゆめ」の約2.6倍である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 胚芽が大きく、GABA、ビタミンE等の成分が多い特性を活かし、発芽玄米や胚芽精米としての利用を図り、北海道産米の新規需要の開拓に資する。
  • 適応地帯は北海道上川中南部、留萌中南部以南である。
  • 育苗時の苗立ちが悪いので、比重1.10以上の塩水選および十分な浸種を行い、通常より2~4割程度多く播種する。
  • 播種後は育苗器に入れ、苗代では十分な保温を行うため2重トンネルを活用するなど、発芽・苗立ちの促進に努める。
  • 初期生育が悪いため、極端な深植えを避け、適正な水管理を行う。

具体的データ

表1 「ゆきのめぐみ」の特性概要

表2 GABA含量およびビタミンE含量

その他

  • 研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
  • 課題ID:311-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:1999~2006年度
  • 研究担当者:清水博之、横上晴郁、松葉修一、安東郁男、黒木慎、荒木均