根釧・道北地域向きの耐倒伏性サイレージ用トウモロコシ新品種「北交66号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

「北交66号」は、熟期が“早生の早”に属し、同熟期の品種「ぱぴりか」と比べ、乾物収量やTDN収量は同程度であるが、雌穂収量が同等以上で雌穂中の子実割合が高い。また、耐倒伏性が強く、極強レベルのすす紋病抵抗性を有する。

  • キーワード:トウモロコシ、サイレージ、品種、雌穂、耐倒伏性、すす紋病、飼料作物育種
  • 担当:北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム、北海道立根釧農業試験場
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

草地酪農地帯である北海道の根釧・天北地域において飼料自給率の向上を図るためには、高栄養な子実を多く含むトウモロコシの栽培拡大が不可欠である。温度や日照条件が厳しいこれらの地域の栽培品種には、安定して黄熟期に達するだけの早熟性や耐冷性、重要病害のすす紋病に対する抵抗性などが求められる。育成品種「ぱぴりか」は、耐冷性に優れ根釧地域での普及が進んでいるが、耐倒伏性の制約から天北地域での栽培には不適であり、天北地域でも栽培が可能な品種が必要とされている。そこで、「ぱぴりか」並の熟期で、根釧地域だけでなく天北地域を含む道北地域にも適する安定多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北交66号」は、Ho87×Ho90の単交雑一代雑種である。
  • 熟期は “早生の早”に属する。「ぱぴりか」に比べて、絹糸抽出期は1日遅いが、収穫時の乾物率は同程度である(表1)。
  • 発芽期は「ぱぴりか」より1日遅く初期生育は「ぱぴりか」よりやや劣る(表1)。特性検定試験における耐冷性の判定は“やや強”で、「ぱぴりか」の“強”に比べてやや弱いが「エマ」の“やや弱”より強い。
  • 稈長は「ぱぴりか」より低く、着雌穂高は「ぱぴりか」並である(表1)。
  • 耐倒伏性は「ぱぴりか」より強い(表1)。
  • すす紋病抵抗性は“極強”、ごま葉枯病抵抗性は“強”で、いずれも「ぱぴりか」およびすす紋病抵抗性の基準品種「ダイヘイゲン」より強い(表3)。
  • 乾物総重およびTDN収量は「ぱぴりか」並であるが乾雌穂重は「ぱぴりか」並かやや高く(表1、図1)、雌穂中の子実割合は「ぱぴりか」より高い(表2)。そのため、子実重割合の高いサイレージ原料が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 適地は、北海道の根釧および道北地域。
  • 普及見込み面積は1,000haである。
  • 栽植密度はアール当たり850~920本程度とする。

  平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
とうもろこし(サイレージ用)新品種候補「北交66号」(普及奨励)

具体的データ

表1 「北交66号」の特性概要

図1 「北交66号」の部位別乾物収量 注:根釧農試および上川農試天北支場における2005~2008年の平均 棒中の数字は上から乾物総重、乾茎葉重および乾雌穂重の対「ぱぴりか」比

表2 「北交66号」の雌穂特性

表3 「北交66号」の病害抵抗性

その他

  • 研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
  • 課題ID:212-c.2
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2001~2008年
  • 研究担当者:濃沼圭一、斉藤修平、榎宏征、三木一嘉(北農研)、出口健三郎、佐藤尚親、
                     林拓、牧野司(根釧農試)