ポテトチップ原料用品種の選定と利用条件の設定によるバレイショの周年安定供給体制

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要約

ポテトチップ原料用バレイショとして、暖地産では既存品種の「トヨシロ」と比較して「らんらんチップ」は収量が高く加工適性に優れる。北海道産では主要5品種について、チップカラーおよび芽長から品種ごとの最適貯蔵条件と使用時期を策定でき、周年供給体制を確立できる。

  • キーワード:バレイショ、ポテトチップ、品種、貯蔵条件、使用時期
  • 担当:北海道農研・寒地地域特産研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ポテトチップ用原料バレイショは、5月下旬から8月上旬までは九州および関東南部産が供給されるが、収量や品質が不安定である。8月中旬から10月中旬にかけて北海道産が収穫され、これを低温で貯蔵して翌年の5月まで使用しているが、低温貯蔵により還元糖が増加しチップが焦げて食味が低下する。貯蔵後昇温するリコンディショニング処理により還元糖は減少するが、発芽が促進され、除去できなかった芽が製品に混入し消費者クレームの一因となっている。そこで国産原料による周年安定供給を目的に、暖地産については適品種選定のための加工適性評価、北海道産については品種別、使用時期別の最適貯蔵条件を策定する。

成果の内容・特徴

  • 鹿児島県の生産者およびカルビー(株)鹿児島工場の実用規模試験により、暖地産「らんらんチップ」は「トヨシロ」と比較して収量が高く、チップカラーが良好で加工適性に優れ(表1)、生産者および実需者の評価は高く、普及段階に移行できる。
  • 北海道産では、チップカラーおよび芽長から、品種ごとに以下のように最適貯蔵条件、使用時期を策定できる(表2)。 「トヨシロ」:貯蔵温度を9.5°Cとし、使用時期は1月までとする。 「らんらんチップ」:貯蔵温度を8°Cとし、チップカラーは良いが4月になると塊茎内に根が入りこむ現象が見られるため、使用時期は2月までとし3月中には使用を終了する。 「アンドーバー」:貯蔵温度を8°Cとし、使用時期は2月までとする。 「きたひめ」:チップカラーについてはスノーデンと同等以上であるが、4月以降
  • リコンデショニング処理は、チップカラー向上の効果は大きいが芽長が増大する(表2)。
  • 品種の使い分けと産地のリレーにより、周年供給体制を強化できる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地産「らんらんチップ」は収穫時に塊茎割れなどの損傷が発生することがあるので、収穫作業時これらの低減に留意する。
  • 北海道産の品種ごとの最適貯蔵条件は、年次変動や栽培地区・生産者・圃場の違いなどにより微調整が必要な場合がある。
  • リコンデショニング処理は芽長が増大するので、できるだけ必要としない貯蔵管理を行うことが望ましい。

具体的データ

表1 鹿児島県における春作の生産物とポテトチップ製造の評価

表2 北海道産原料の品種別最適貯蔵条件及び使用時期

表3 品種の使い分けと産地リレーによる周年供給体制

その他

  • 研究課題名:寒地における地域特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
  • 中課題整理番号:311f.1
  • 予算区分:委託プロ(加工)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:遠藤千絵、森 元幸、大橋聖也(カルビーポテト(株))、津山睦生(カルビーポテト(株))