乳牛の泌乳持続性が高い酪農経営の経営的事前評価

要約

Wilminkモデルに基づく乳牛の60日乳量と240日乳量の差が12~13kgである泌乳持続性が相対的に高い経営では、乳量差が約14kgである持続性が低い経営と比較して、乳飼比が小さい、購入飼料費や診療薬品費が少ない、収益性が高いという特徴が見られる。

  • キーワード:泌乳持続性、Wilminkモデル、乳飼比、購入飼料費、診療薬品費、収益性
  • 担当:北海道農研・北海道農業経営研究チーム、自給飼料酪農研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

これまで、酪農経営は1戸当たり飼養頭数の拡大とともに1頭当たり乳量水準の上昇によって生乳生産量の増加を図ってきており、泌乳前期に偏った乳量の増加と泌乳前期の高乳量を支えるための濃厚飼料給与量の増加を招いている。このことは、乳牛の疾病増加や分娩間隔の長期化、それにともなう収益性の低下等の一要因として懸念されており、泌乳中期および後期の乳量向上を目的とした泌乳曲線の改善による酪農経営の収益性向上のための技術開発研究が実施されている。
そこで、十勝地域C地区において、乳検加入67戸の中から経産牛飼養頭数100頭規模、乳量8,000kg以上の酪農経営を対象に、独立行政法人家畜改良センターで利用されている泌乳曲線の推計式であるWilminkモデルにより推定される60日乳量と240日乳量の差を泌乳持続性の指標として、泌乳持続性が高い酪農経営の経営経済的特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • No.1経営とNo.2経営における泌乳持続性の値に関する乳牛の累積頭数割合分布は、北海道乳検データにおける分布に比較して相対的に持続性の高い方向に位置している。他方、No.3経営とNo.4経営の分布は泌乳持続性の低い方向に偏っている(図1)。各経営間の泌乳持続性の分布の差に関する統計的検定を行うと、No.1とNo.3、No.4の間には有意差が見られ、同様にNo.2とNo.3、No.4の間にも有意差が見られる。他方、No.1とNo.2の間、およびNo.3とNo.4の間には有意差はない(表1)。この結果から、No.1とNo.2を泌乳持続性の高い経営、No.3とNo.4を泌乳持続性の低い経営に相対的に分類できる。
  • 泌乳持続性の高い経営は、購入飼料に関して、No.1およびNo.2経営の乳飼比は0.34および0.39であり、生乳1kg当たり購入飼料費は20.9円および21.3円と、どちらもNo.3、No.4経営よりも低く、購入飼料への依存が小さくなっている。また、生乳1kg当たり診療薬品費についても、No.1およびNo.2経営はNo.3、No.4経営よりも小さい。さらに、生乳販売収支はNo.1およびNo.2経営の方が大きくなっている。(表2)
    泌乳持続性の高い経営は購入飼料への依存が相対的に小さいもとで9,000kg以上の乳量を達成しており、乳量は10,000kgを超えているが持続性の低い経営よりも高い収益性を実現している。

成果の活用面・留意点

  • 北海道乳検データは乳量水準8,000kg以上を対象にしている。8,000kg未満を含める場合は泌乳持続性の分布が異なる。
  • 本情報は事前評価であり、今後さらに分析を深めていく必要がある。

具体的データ

図1 対象経営における乳牛の泌乳持続性累積割合

表1 経営の泌乳持続性の差に関する検定結果

表2 泌乳持続性に基づく経営の相対的分類と特徴

その他

  • 研究課題名:北海道農業の動向解析に基づく技術開発方向の提示と経営類型に応じた経営継承・経営戦略・経営支援システムの策定
  • 中課題整理番号:211a.1
  • 予算区分:交付金プロ(泌乳持続型乳生産)
  • 研究期間:2009年度
  • 研究担当者:久保田哲史、藤田直聡、武田尚人