ホタテガイ加工残さを原料とする速効性有機液肥・培土の製造法および使用法

要約

微生物複合発酵により、ホタテガイ加工残さから速効性有機液肥および育苗用培土を製造できる。有機液肥は、低分子のペプチドを含有し、速やかな肥効を示す。液肥は、水稲育苗やトマト本圃用追肥として、培土は水稲苗、野菜苗の育苗に使用できる。

  • キーワード:未利用資源、ホタテガイ、有機液肥、速効性、低分子ペプチド
  • 担当:北海道農研・寒地温暖化研究チーム、根圏域研究チーム
  • 代表連絡先:電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

北海道においては、ホタテガイ加工残さなど水産廃棄物が大量に発生し、その処理に多額の費用が投じられている。その一方、有機質肥料の多くは、緩効性であるため、有機栽培を実践する農家からは、安価で速効性を有する有機質肥料に対する強い要望がある。双方の問題解決に貢献するため、水産廃棄物を原料とする速効性有機質肥料の低コスト製造技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • タンパク質分解と臭い抑制のための乳酸生成(pH低下)を同時に行う微生物複合発酵技術を確立し、ホタテガイ加工残さ(主に生殖巣のうちの精巣)から速効性を有する有機液肥と育苗用培土の製造が可能である(図1)。
  • 微生物複合発酵系では、タンパク質分解菌、乳酸生成菌として、それぞれAspergillus awamoriおよびLactobacillus rhamunosusを用い、乳酸発酵基質として20g/Lの廃糖蜜を添加する(図1)。約0.75%の窒素を含む分解液は、プレート式濃縮装置を用いて、10倍濃縮にかけられる。固形残さは乾燥・粉砕により、肥料分を有する培土材として利用可能である。
  • 有機液肥は、分子量1,000以下のペプチドを含有し(図2)、窒素は植物によって速やかに吸収される(図3)。
  • 有機液肥は、水稲育苗用追肥、トマト本圃用追肥として、固形残さを原料とする培土は水稲苗、野菜セル苗、野菜ポット苗の育苗場面において利用できる(表1、2)。

成果の活用面・留意点

  • 有機液肥の10倍濃縮品は、肥料取締法の定める液状複合肥料としての基準を満たす。
  • カドミウムを蓄積する中腸腺を除去した原料を用いるため、製品中のカドミウム濃度は、極めて低く、基準値以下である.
  • 約4トンの精巣(1バッチに相当)から、475本の液肥(10倍濃縮品、20kg入り)と約1,700袋の育苗培土(50L入り)が生産可能である。
  • 液肥および育苗用培土の製造原価(試算)は、上記規格品において、それぞれ4,600円、3,200円である(地方自治体等によるイニシャルコスト(建設費、機材費など)の75%が補助され、償却年数を10年と仮定)。

具体的データ

図1 ホタテガイ加工残さを原料とする有機液肥、育苗用培土の製造フロー

図2 液肥中ペプチドの分子量分布

図3 無菌水耕栽培におけるペプチド施用条件下での窒素吸収速度(キャベツ)

表1 液肥の主要元素濃度

表2 液肥および育苗用培土の利用方法

その他

  • 研究課題名:寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 中課題整理番号:215a.1
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:古賀伸久、岡崎圭毅、野副卓人、建部雅子、藤倉潤治(道南農試)、日笠裕治(中央農試)、小原寿幸(函館高専)、田中弘康(マリンケミカル研究所)、野島正博(マリンケミカル研究所)、畑島英機(北海三共)、桑原眞人(グリーンテクノバンク)