高温・多湿な条件でも安定栽培が可能なテンサイ「北海101号」

要約

テンサイ「北海101号」は、褐斑病、黒根病およびそう根病の主要3病害に対する複合抵抗性を有す。「北海101号」は、高温・多湿により普及品種の糖量が大きく減少する条件においても、糖量の減収が少なく、安定栽培が可能である。

  • キーワード:テンサイ、複合病害抵抗性、高温、多湿、安定栽培
  • 担当:業務需要畑野菜作・寒地畑野菜輪作
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

北海道のテンサイは、近年、不作が続いている。2010年のように夏期が高温・多湿な気象条件では、褐斑病、黒根病やそう根病が発生し、深刻な収量低下を招く。しかし、現在普及している品種の大半は、病害抵抗性をもたず、高温・多湿による病害発生への対応は難しい。そこで、北海道農業研究センターが保有する病害抵抗性の遺伝資源を活用し、褐斑病、黒根病およびそう根病に対する抵抗性が優れ、高温・多湿な条件においても、糖量の減収が少なく、安定栽培が可能な複合病害抵抗性品種を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「北海101号」は、北海道農業研究センターの種子親系統「JMS64」とスウェーデンのシンジェンタ社の花粉親系統「L40200」との交配により育成した単胚・二倍体一代雑種である。
  • 「北海101号」は、現在の普及品種並の糖収量であるが、これまでの普及品種にはみられない黒根病抵抗性"強"であり、褐斑病およびそう根病に対しても"強"と高い複合病害抵抗性を示す(表1)。
  • 「北海101号」は、褐斑病および黒根病が激発した条件でも、両病害の発生が少ない(図1)。
  • 褐斑病および黒根病が多発した2010年において、「北海101号」の褐斑病発病程度(0~5)および根腐症状株率は、地域を代表する普及品種「フルーデンR」より低い。また、「北海101号」の糖量は「フルーデンR」より多い(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 テンサイ生産者、テンサイ製糖各社
  • 普及予定地域・普及予定面積 抽苔発生の懸念のある北海道網走沿海部を除き、黒根病を含む根腐症状が恒常的に発生する排水不良ほ場を中心に500ha
  • その他 抽苔耐性が"やや強"であるため、早期播種や、過度の低温による馴化処理は避ける。本品種の登録出願はシンジェンタ社との協同で行う予定である。

具体的データ

表1.生産力試験結果1)および病害抵抗性の特性評価一覧

図1.褐斑病および黒根病が激発するほ場における両病害発生程度 (2010年10月撮影)

図2.普及が見込まれる真狩村における「北海101号」と地域を代表する普及品種「フルーデンR1)」の糖量、褐斑病発病程度および根腐症状株率2)の比較(2010年3))

(黒田洋輔)

その他

  • 中課題名:業務用野菜・畑作物を核とした大規模畑輪作生産システムの確立
  • 中課題番号:113a1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2011年度
  • 研究担当者:黒田洋輔、岡崎和之、田口和憲、阿部英幸、高橋宙之
  • 発表論文等:1) 田口ら(2011)てん研報、52号:1-6