東北地域向きサイレージ用トウモロコシの多収新品種「北交72号」

要約

「北交72号」は、早晩性が普及品種「36B08」および「セシリア」の中間で、東北地域では"早生"に属する。初期生育に優れ、乾物収量が多い。すす紋病抵抗性は"強"で、赤かび病毒素の濃度が同熟期の外国品種に比べて低い。

  • キーワード:トウモロコシ、サイレージ、品種、収量、赤かび病、飼料作物育種
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年の濃厚飼料価格の高騰に対応して購入飼料費の節減を図る上で、高栄養で多収なサイレージ用トウモロコシの重要性はますます高まっている。飼料畑の面積が限られている東北地域では、早生~中生で乾物収量の多い品種へのニーズが高い傾向がみられる。また、良質粗飼料の安定生産のためには主要病害に対する抵抗性が求められる。そこで、東北地域に適する早生で、乾物収量が多く病害抵抗性に優れる品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「北交72号」は、FR7918×Ho95の単交雑一代雑種である。
  • 熟期は、適地の東北地域では"早生"に属する。絹糸抽出期は「36B08」より3日遅く「セシリア」より3日早い(表1)。
  • 発芽期は「36B08」および「セシリア」と同日で、初期生育は両品種よりやや優れる(表1)。
  • 乾物総重は「36B08」より7%高く「セシリア」より5%高い。乾雌穂重割合は「36B08」よりやや低く「セシリア」より低い。茎葉のTDN含量は、「36B08」よりやや高く「セシリア」より高く、ホールクロップのTDN含量は両品種と同程度である(表1)。
  • 稈長および着雌穂高は「セシリア」並で「36B08」より高い(表1)。
  • 耐倒伏性は「36B08」よりやや劣り「セシリア」並である(表1)。
  • すす紋病抵抗性は"強"で「36B08」より弱く「セシリア」並である。ごま葉枯病抵抗性は"中"で「36B08」よりやや弱く「セシリア」よりやや強い(表2)。
  • 赤かび病の産生する毒素の1つであるフモニシンの濃度が同熟期の外国品種に比べて低い(図1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 畜産農家、TMRセンター等の自給飼料生産組織、飼料作物栽培農家など
  • 普及予定地域・普及予定面積
    栽培適地は東北地域
    普及予定面積は600ha(普及対象地域における栽培面積の5%に相当)
  • その他
    種子は、2014年以降、(社)日本草地畜産種子協会を通じて民間種苗会社から販売の予定

具体的データ

表1 「北交72号」の特性概要

表2 「北交72号」のすす紋病およびごま葉枯病抵抗性(2009~2010年)

図1 東北地域における「北交72号」の赤かび病毒素濃度(2010年)

(濃沼圭一、伊東栄作)

その他

  • 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
  • 中課題番号:120b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2005~2011年度
  • 研究担当者:濃沼圭一、伊東栄作、榎宏征、斉藤修平
  • 発表論文等:2012年4月以降品種登録出願予定