衛星画像データに基づく土壌の母材を考慮した畑地土壌の炭素貯留量の推定

要約

衛星画像の輝度データと表層土壌炭素濃度の間には、母材毎に有意な相関関係がある。また、土壌炭素貯留量は、表層土壌炭素濃度と有意な相関関係があり、土壌炭素濃度を土壌炭素貯留量に変換することで、広域的な土壌炭素貯留量のマップ化が可能である。

  • キーワード:衛星リモートセンシング、土壌炭素貯留量、表層土壌炭素濃度、畑地土壌
  • 担当:気候変動対応・気象災害リスク低減
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

今後の地球温暖化緩和策の策定のために、土壌炭素貯留機能が注目されており、全国スケールの農地土壌の炭素貯留量の解析、衛星等を利用した土壌炭素賦存に関してシステムの開発が求められている。本研究では、北海道十勝地域芽室町の畑地を対象に、衛星画像から得られる輝度データを用い、土壌母材毎(図1a)に、表層0~30cm部分に存在する土壌炭素貯留量の推定を行う。

成果の内容・特徴

  • 衛星画像データ(SPOT4号;20m解像度)と、表層(0~30cm)の土壌炭素濃度は、中間赤外域を除く各波長の輝度値と1%水準で有意な負の相関関係が得られる。土壌の母材別に見た場合、河成堆積物では、赤波長の対数相関(r=-0.82)、火山灰/河成堆積物では、赤波長の累乗相関(r=-0.91)、火山灰では、近赤外の累乗相関(r=-0.90)が、最も高い相関関係を示す。
  • 表層(0~30cm)の土壌炭素濃度と土壌炭素貯留量は、有意な正の相関関係にある。土壌の母材別での土壌炭素濃度(x,g/kg)と土壌炭素貯留量(y,Mg C/ha)との関係式は、河成堆積物;y=90.4×ln(x)-206、火山灰/河成堆積物;y=7.58×x0.743、火山灰;y=3.76×x0.891である。衛星画像データから得られる輝度から推定される土壌炭素濃度を土壌炭素貯留量に変換し、図1に示すとおり、土壌炭素貯留量のマップ化が可能である。
  • 推定された土壌炭素貯留量と土壌調査から得られた土壌炭素貯留量の実測値は、ほぼ1:1の線上にプロットされ、その相関係数は、r=0.91である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 衛星画像データから得られる土壌炭素濃度から、IPCCで対象とされる表層0~30cmの土壌炭素貯留量の広域的かつ高解像度での推定が可能である。
  • 他の畑地土壌の圃場でも適応可能であるが、対象とする深さ30cmまでの層でプラウ耕起が行われ、土層が均一化していることが、推定を行う、前提条件となる。
  • 水田や、植生で地表面が常時被覆されている草地については適用出来ない。

具体的データ

図1 土壌母材区分図(a)および土壌炭素貯留量マップ(b)
図2 土壌炭素貯留量推定値と実測値の関係

(永田 修)

その他

  • 中課題名:気象災害リスク低減に向けた栽培管理支援システムの構築
  • 中課題番号:210a3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:永田 修、丹羽勝久((株)ズコーシャ)、本郷千春(千葉大学)
  • 発表論文等:Niwa et al., (2011), Soil Science and Plant Nutrition
    doi: 10.1080/00380768.2011.557769