良食味のだったんそば新品種候補「芽系T27号」

要約

「芽系T27号」は「北海T8号」(標準品種)と比較し麺の苦味が弱く食味に優れ、子実のルチン分解活性が極めて低いため麺のルチン含量が多い。

  • キーワード:だったんそば、苦味、ルチン、ケルセチン
  • 担当:ブランド農産物開発・資源作物品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

だったんそばは、抗酸化能や毛細血管強化効果を有するとされるルチンの含有量が多く、自殖性作物であるためオホーツク沿海など訪花昆虫の活動が制限される寒地での導入が期待できる。しかし、苦味が強いため嗜好性が低く、またルチン分解酵素活性が極めて強いため、従来の品種では子実が含有するルチンの大部分は加水と同時に分解してしまう。そこで、苦味が弱く、ルチン分解酵素活性の低いだったんそば品種を育成し、ソバ麺等の加工食品開発により6次産業化等の地域産業活性化に資する。

成果の内容・特徴

  • 「芽系T27号」は、母として苦味が弱くルチン分解酵素活性の低い系統「f3g162」(ネパールの遺伝資源;JP番号:86972からの選抜系統)、父として「北海T8号」を親とする交配後代から育成した系統である。
  • 「芽系T27号」は、「北海T8号」(標準品種)と比較し、麺の苦味が弱く食味に優れる(表1)。
  • 「芽系T27号」は、「北海T8号」と比較し、ソバ粉のルチン分解活性が極めて低いため(表2)、麺にした場合のルチン含量は多く、ルチンの分解物であるケルセチン含量は少ない(図1)。
  • 「芽系T27号」は「北海T8号」と比較し、成熟期、草丈は同程度、子実重は生産力検定試験(芽室町)では同程度、現地試験(雄武町)では多い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「芽系T27号」は「北海T8号」並みに脱粒しやすいため適期収穫につとめる。
  • 「芽系T27号」の種子や粉にその他のだったんそば品種等が混入すると、苦味やルチン分解が生じやすくなるため注意する。
  • 普及地域(見込み):網走沿海、普及規模(見込み)10ha

具体的データ

表1 「芽系T27号」の麺の評価結果
図1 ソバゆで麺のルチンおよびケルセチン含量
表2 生産力検定試験および現地試験結果

(鈴木達郎)

その他

  • 中課題名:高付加価値を有する資源作物品種の育成と新規作物の評価・活用
  • 中課題番号:320d0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2006~2011年度
  • 研究担当者:鈴木達郎、六笠裕治、森下敏和、瀧川重信、野田高弘、山内宏昭、横田聡、石黒浩二
  • 発表論文等:品種登録出願(年度内見込み)