農地流動化が進む大区画圃場整備地域における大規模借地経営の面的集積

要約

農地流動化が著しく進む大区画圃場地域における大規模借地経営は、借地を行う集落の選別や集約化、借地経営間での農地借り換えによる拠点集落での拡大により、大規模な農地確保と面的集積を加速できる。

  • キーワード:農地流動化、大規模借地経営、大区画圃場、面的集積
  • 担当:経営管理システム・ビジネスモデル
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

我が国水田農業では昭和一桁世代のリタイアにより、大規模借地経営が急増しつつある。従来、借地経営では圃場が分散するとともに、畦畔管理、農道・水利施設等の資源管理の困難が指摘されてきている。だが、近年では農地の流動化が進み、借地経営の行動の自由度が増している。特に、新潟県J市では1990年代から農地流動化が著しく進む下、借地経営が交換耕作の実施、畦畔管理や資源管理のための共同作業の地権者や集落への再委託を行い、上記問題の解消を図ってきている。しかし、大区画圃場整備の進行に伴い、借地経営では圃場分散克服に向けた新たな方法がとられ、急速に面的集積が進んでいる。
そこで、著しい農地流動化と大区画圃場整備が共に進んだJ市S区における大規模借地経営の行動から、面的集積の新たな方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • J市S区では10a区画から1ha標準への大区画圃場整備が100%完了し、次の効果が現れている(表1)。区画拡大とともに、畦畔面積は大幅に縮小し、作業効率の上昇と畦畔管理労力の低減が進んだ。また、農道の拡幅・整備と用水パイプライン化等から、農道・水利施設の資源管理等の共同作業領域が縮小している。
  • S区における15ha以上の大規模借地経営群の展開を示す(表2)。その農地集積先は同S区内のリタイア者からで、格別な圃場分散は存在していない。 出作依存が顕著な最大規模のA経営(48ha)の行動から圃場分散克服・面的集積のポイントを整理する(図1)。第1は大区画圃場整備にあわせた借地集落の選別・集約である。農地供給活発な出作先KD集落で早くから入作し、担い手として認知される中で集積を進める一方、圃場整備進行が遅い、遠距離や小面積規模の出作先農地を返却している。畦畔管理の地権者再委託、及び資源管理共同作業への出役は大区画整備によって消失している。
  • 第2にA経営では拠点集落を決め(KD集落)、そこで大規模な農地集積を行った結果、面的集積が実現している(図2)。その集積農地は集落耕地の過半を占め、圃場も連担状態にある。さらに今後はいっそうの借地集落集約のため、借地経営が相互に拠点集落とそれ以外を取り決め、拠点集落へ農地が集中するよう借り換えを目指している。即ち、A経営はB経営が農地集積を進めるS集落から農地を返却して撤退し、一方でKD集落ではB経営が入作を中止してA経営への集積が進む見込みである。
  • 以上のように、大規模借地経営の面的集積の方法は大区画整備に合わせた借地集落の選別、借地経営間での農地借り換えによる特定拠点集落における集積である。

成果の活用面・留意点

  • 大規模借地経営における経営者の農地集積を目指した土地利用調整推進の参考となる。
  • 都府県の農地流動化が著しい地域、かつ集落営農組織展開の弱い地域が対象となる。

具体的データ

 表1~2,図1~2

その他

  • 中課題名:地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
  • 中課題番号:114b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:細山隆夫
  • 発表論文等:細山(2011)農業経営研究、49(3):12-22