泌乳ステージごとの検定日乳量に対する体細胞スコア効果の推定モデル

要約

日乳量に対する体細胞スコア(SCS)の効果は、SCSの高さでクラス化するモデルによる推定が妥当である。SCSの上昇に伴う日乳量の低下は、初産および2産ともに泌乳前-中期、後期および末期の3区分で異なるため、それぞれ区分して推定する必要がある。

  • キーワード:体細胞スコア、乳量損失、乳牛
  • 担当:家畜生産・泌乳平準化
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳中体細胞数(千個/mL)を対数変換した体細胞スコア(Somatic cell score; SCS)は、酪農現場における乳房炎の管理指標である。また、SCSの上昇にともなって日乳量が低下することが指摘されており、その程度は産次および泌乳ステージによって異なる。そこで、初産および2産の牛群検定記録を用いて、泌乳ステージごとの日乳量に対するSCSの効果を推定する最適なモデルを検討し、その効果を推定する。

成果の内容・特徴

  • 日乳量に対するSCS効果を推定するモデルの適合度は、初産および2産について、それぞれSCSに対する4次回帰および6次回帰により推定するモデルにおいて最も高い。しかし、回帰による推定は、データ数が少ない、SCSの高い範囲において推定精度が低下する(図)。そのため、日乳量に対するSCSの効果は、SCSの高さで日乳量をクラス化するモデルによる推定が妥当である。
  • 各SCSクラスにおける、日乳量に対するSCS効果の推定値は、初産のSCSクラス8を除き、分娩後60日以内(泌乳前期)と61‐150日(泌乳中期)との間に有意な差(P<0.05)がない。一方、初産のSCSクラス2-8および2産のSCSクラス3-7において、泌乳前期と、分娩後151‐240日(泌乳後期)および241‐305日(泌乳末期)の推定値間に有意差(P<0.05)がある。さらに、初産のSCSクラス3、4、6、および2産のSCSクラス1、3-6において、泌乳後期と泌乳末期の推定値間に有意差(P<0.05)がある(表)。このことから、日乳量に対するSCSの効果は、初産および2産ともに泌乳前-中期、泌乳後期および泌乳末期の3区分により推定する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • SCSの上昇にともなう日乳量の損失量の予測、または検定日乳量および泌乳曲線に対するSCS補正係数の算出に利用可能である。
  • 北海道における2004年‐2010年の牛群検定記録から、牛群‐年‐季節内の検定記録数が産次ごとに20以上である48牛群の初産牛21,238頭および2産牛15,281頭の分娩後5‐305日記録に基づく推定結果である。

具体的データ

 図,表

その他

  • 中課題名:乳牛の泌乳曲線平準化を核とする省力的な群管理技術の開発
  • 中課題番号:130f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2012年度
  • 研究担当者:山崎武志、萩谷功一、長嶺慶隆、武田尚人、山口 諭(北酪検)、曽我部道彦(北酪検)、齊藤祐介(北酪検)、中川智史(北酪検)、富樫研治(家畜改良事業団)、鈴木啓一(東北大)
  • 発表論文等:山崎ら(2013)日畜会報、84 : 11-18