明赤紫色の花色で花序の大きなアリウム新品種候補「札幌3号」

要約

種間交雑、胚培養により育成したアリウム「札幌3号」は、明赤紫色の花色で、直径11cmの大きな花序に200個程度の小花が球状に密生する。10g以上球で全球が開花し、球根増殖性に優れる。切り花用、花壇用のいずれにも利用できる。

  • キーワード:アリウム、種間雑種、胚培養、明赤紫色、大型花序
  • 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

アリウム類は新規花きとして切り花需要が増加しているが、現在利用されている大部分の品種が野生種からの選抜系であり、花色は濃い赤紫色のものが多く、また増殖率が低いなどの問題点がある。そこで、種間交雑により明赤紫色で大型の花序を持ち、耐寒性や球根増殖性に優れた品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 切り花用に栽培されることがある野生種ホーランディクム(Allium hollandicum)を子房親として、矮性ではあるが枯葉期が遅い野生種カラタビエンセ(A.karataviense)を花粉親として1997年6月と1998年6月に種間交雑を行い、胚培養によって得られた11個体の雑種から、花色が鮮明で、花茎長が長く、また球根増殖性にも優れる個体を選抜し、アリウム「札幌3号」を付した。
  • 耐寒性を有し、札幌における露地栽培では5月下旬に開花する(表1)。
  • 花弁長12mm、花弁幅約2mm、明赤紫色の小花が200個程度球状に密生して直径11cmの大きな花序を形成する(表1、図1)。奇形花の発生はみられない。
  • 花茎長は55cm、茎径は7mmと太く、耐倒伏性に優れる(表1)。開花時の葉の枯れ上がりが少ないため、花壇用としての観賞価値も高い(図2)。
  • 10g以上球(直径約28mm以上)で全球が開花するが、球重が大きいほど開花時期が早く、小花数および花序径が増加する。花茎長は15g以上球でほぼ一定となる(表2)。
  • 開花球を一作することにより、球数は3~4倍、球重は5~6倍に増加する(表2)。交配親よりも2倍程度球根増殖性に優れ、球根の増殖も容易である。

成果の活用面・留意点

  • 切り花用、花壇用のいずれにも利用できる。
  • 耐寒性を有し、北海道での露地栽培が可能である。
  • 暖地での栽培適性については未検討である。
  • 品種登録申請を行い、民間種苗会社への許諾により普及を図る。

具体的データ

 表1~2,図1~2

その他

  • 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
  • 中課題番号:141h0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2012年度
  • 研究担当者:篠田浩一、村田奈芳
  • 発表論文等:品種登録申請予定