2産以上の乳牛の乾乳期間を30日に最短縮しても次乳期の産乳性は低下しない

要約

乾乳期間を30日に最短縮した場合、初産牛では次乳期の305日乳量が減少するが、2産以上の乳牛では次乳期の分娩後のピーク乳量が低くなるものの、305日乳量は変わらない。また乾乳期間短縮は次乳期の乳成分率と乳中体細胞数にも影響しない。

  • キーワード:乾乳期間、一乳期、ホルスタイン、乳量、乳成分
  • 担当:家畜生産・泌乳平準化
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

乳牛の乾乳期間は前乳期の搾乳停止に伴う乳量減少と次乳期の乳量増加等を考え、これまで60日前後が推奨されている。一方、乳牛の遺伝的改良と飼養管理の改善の結果、わが国のホルスタイン種乳牛の305日乳量は1975年の5,826kgから2010年の9,286kgまで著しく増加している。その結果、分娩前60日でも日乳量20kg以上の個体が多いため、乾乳期間を短縮し前乳期の搾乳期間を延長することで出荷乳量の増加が見込めるが、次乳期の乳量減少が懸念される。そこで、これまでの成績で最も短い乾乳期間30日への短縮が、初産牛と2産以上の乳牛の次乳期の乳量・乳成分に及ぼす影響を提示する。

成果の内容・特徴

  • 短縮区は泌乳後期牛を用い、グラスサイレージ゙(GS)主体の混合飼料を不断給飼して搾乳期間を延長し、乾乳期間を30日に短縮する。乾乳後は分娩まで、乾草、GSを不断給飼、配合飼料を制限給飼する。対照区は分娩前2ヵ月の乾乳牛を用い、分娩前1ヵ月までは乾草のみを不断給飼し、分娩前1ヵ月からの給与飼料は短縮区と同様とする。両区ともに分娩後3ヵ月はGSと配合飼料を乾物比6対4で混合し不断給飼する。両区ともに分娩後4ヵ月以降は体重と乳量に応じ日本飼養標準にしたがって、GS、コーンサイレージ、配合飼料、大豆粕を制限給飼し、乾草を不断給飼する(表1)。
  • 初産牛の乾乳期間を短縮した2産分娩後の乳牛(短縮区)は、対照区に比べ一乳期を通して乳量が低く推移する(図1)。一方、2産以上の乳牛の乾乳期間を短縮した3産以上分娩後の乳牛(短縮区)は、対照区に比べ泌乳前期でピーク乳量が低下するが、泌乳中後期では同程度で推移する(図2)。
  • 2産牛の305日乳量は、短縮区が対照区に比べ有意(P < 0.05)に減少するが、3産以上の乳牛では区間に有意な差を認めない(表2)。305日乳量に短縮区の前乳期の搾乳期間延長による乳量を加えた総乳量は、いずれの産次も区間に有意な差を認めない(表2)。305日の乳成分率と乳中体細胞数は区間に有意な差を認めない(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:泌乳末期の高泌乳牛の搾乳期間延長を検討している酪農家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国(北海道酪農家戸数の25%、1780戸)
  • その他 乾乳期間30日は最も短い研究成績であり、他の短縮期間の成績等を含めて総括すると、2産次以上の乾乳期間30~40日が、泌乳末期の搾乳期間延長による出荷乳量増加、分娩後産乳性の維持、乾乳期単一飼料給与の一群管理による省力効果等が期待されるので、当面の推奨目標となる。分娩前60日の日乳量が15kg以下、ボディコンディションスコアが2.75以下、双胎妊娠牛、泌乳後期に乳房炎を発症して乾乳期治療が必要な牛は乾乳期間短縮すべきでない。乾乳期間短縮を行う場合には、乾乳軟膏の使用禁止期間を遵守し、牛乳の出荷前の抗生物質検査を実施する。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:乳牛の泌乳曲線平準化を核とする省力的な群管理技術の開発
  • 中課題整理番号:130f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006 年~2013年度
  • 研究担当者:中村正斗、中島恵一、高橋雄治、塩野浩紀、菊 佳男
  • 発表論文等:中村ら(2013)日本畜産学会報84(3):349-359.