ケルセチンを高含有するタマネギ新品種「クエルゴールド」

要約

「クエルゴールド」は可食部にケルセチンを高含有するタマネギF1品種である。「クエルゴールド」のケルセチン含量は春播きタマネギの主要品種と比べ安定して6割以上多い。

  • キーワード:タマネギ、ケルセチン、抗酸化能
  • 担当:業務需要畑野菜作・露地野菜品種開発
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

フラボノイドは抗酸化能を持つことから、食事による摂取で循環器系疾患のリスク低減、メタボリックシンドローム等の生活習慣病、加齢に伴う疾患の軽減に寄与すると期待されており、健康への意識が高い消費者からの注目が高い。タマネギはフラボノイドの一種であるケルセチンを多く含有しており、フラボノイドの重要な供給源となる野菜である。そこでタマネギのケルセチン含量を育種的に高め、健康に関心のある消費者にとり高い付加価値を持つ品種の育成を行う。

成果の内容・特徴

  • 「クエルゴールド」は、育種素材をケルセチン高含有の特性により選抜することで得られる両親系統、「OSP-3」(種子親)と「OPP-5」(花粉親)の交配より得られるF1品種である(図1、図2)。
  • 乾物1gあたりに含まれるケルセチン含量は平均5.3mgであり、1球には平均109mgを含有する。試験年次による変動はあるが、春播きタマネギ主要品種である「北もみじ2000」より乾物重あたりで69%、球あたりで61%多くのケルセチンを含有する(表1)。
  • 倒伏期は播種後160日となり、「北もみじ2000」や「クエルリッチ」と同様に中生品種である。茎葉の生育量は「北もみじ2000」に比べて少ない(表2)。
  • 「北もみじ2000」や「クエルリッチ」に比べて、平均1球重は小さく、総収量は低い。球形はやや扁平となり、外皮色は褐色でその色合いは濃い。乾物率は「クエルリッチ」と同様に高い(表2)。
  • 貯蔵性は中程度であり、貯蔵性の良い「北もみじ2000」に劣るが、「クエルリッチ」と同等である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 適応作型は春播き移植栽培であり、ケルセチンを高含有する特徴を生かしたタマネギ生産に活用できる。
  • 不時抽だい発生のリスクが標準品種よりも高いので、早期の播種や定植を避ける等の対策が必要である。
  • 標準品種よりも収穫時の腐敗球の発生程度が高いことから、生育後半から倒伏期にかけて、適宜防除が必要である。

具体的データ

図1~2、表1~2

その他

  • 中課題名:露地野菜の高品質、安定供給に向けた品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:113b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(医農連携)
  • 研究期間:2006~2013年度
  • 研究担当者:室 崇人、嘉見大助、杉山慶太
  • 発表論文等:室ら「クエルゴールド」品種登録出願 2013年8月30日(第28219号)