既存のトラクタを最新の共通通信技術に対応させるための後付キット

要約

既存のトラクタに追加することで、ISO 11783規格に対応した最新のISOBUS作業機や日農工AG-PORT対応作業機と接続利用できるようにするための後付キットである。トラクタを更新せずに、ISOBUS・AG-PORT機器を運用できる。

  • キーワード:ISOBUS、AG-PORT、ISO 11783、トラクタECU
  • 担当:IT高度生産システム・大規模IT農業
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・大規模畑作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

トラクタと作業機械、各種センサを結ぶ、国際標準(ISO 11783)に準拠した共通通信システムの導入が進みつつあり、欧米の機械メーカが策定したISOBUSや日農工(日本農業機械工業会)が策定したAG-PORTに対応した、様々な機械が販売されている。しかしながら、これらのシステムを利用するためには、それに対応した新たな機械類を導入する必要があることから、その導入コストが問題となっている。
農研機構では、これまでにISO 11783に対応したマイコンボード(AgribusBoard32、2012年主要普及成果)、AG-PORTコネクタ(2012年普及成果)、ISO11783用ソフトウエアライブラリ(2013年主要普及成果)等の研究成果を公表しているが、成果の受け渡し先は農業機械メーカに留まっていた。今回、これらの成果を営農家が直接利用できるように、既存のトラクタをISOBUSやAG-PORTに対応した作業機械に接続して利用するための後付(レトロフィット)キットを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本キットは、既存のトラクタに追加することで、国際標準(ISO 11783)に準拠したISOBUS作業機や日農工AG-PORT対応作業機と組み合わせた作業を可能にする後付キットである(図1)。農研機構の研究成果をベースに、ISO 11783規格の9章で記述されているトラクタECU機能を実現するプログラムを開発、ECUおよびコネクタ、ケーブル類などの必要機材と合わせてキット化している。これにより、営農家がトラクタを更新せずに、ISOBUS・AG-PORT機器を運用できる。
  • 本キットに含まれるECUは、トラクタから取得した走行速度やリアヒッチ角度等の情報をISOBUSやAG-PORTに準拠したフォーマットと頻度で送出する。走行速度情報は車速に連動した肥料や薬剤散布等、ヒッチ角度情報は作業のON/OFF制御などに使用される。
  • トラクタの車速は、(1)トラクタ情報の出力コネクタ、(2)トラクタ診断ポート、(3)追加接続する外部センサ(近接、磁気センサ等)のうち、いずれかより取得する(図2)。(1)の場合は、ISO 11786規格(トラクタ・センサ・インターフェース規格)に準拠したパルス信号により情報を取得する。(2)の場合は、ISO 11783規格(ISOBUS)に準拠したCANメッセージにより情報を取得する。(3)の場合は、センサのタイプによりアナログ電圧、又はパルス入力により取得する。出力コネクタや診断ポートにエンジン回転数やヒッチの角度、PTOの回転数やON/OFF情報等が出力されている場合、それらの情報も同時に取得できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:ISOBUS作業機械やAG-PORT対応作業機械を保有する生産者および事業者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本全国、国内で販売されたISOBUS・AG-PORT作業機の総数(約1500台)の1/3にあたる、500台を想定。
  • その他:農業情報設計社より、Agribus-Extenderという名称で販売される。ISOBUS作業機やAG-PORT作業機を運用する際は、別途、対応するユーザーターミナルを用意する必要がある。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:IT等の利用による精密・低コスト大規模農業のための基盤技術開発及び体系化、土地利用型大規模経営に向けた農作業ロボット体系の開発、中小規模水田に対応した温暖平坦地向け水田輪作システムの確立
  • 中課題整理番号:160d0、160a0、111b4
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:西脇健太郎、奥野林太郎、元林浩太、長坂善禎、寺元郁博、濱田安之
  • 発表論文等:
    1)濱田安之ら(2014)職務作成プログラム「トラクタECUソフトウエア」、機構-K10
    2)濱田安之ら(2014)職務作成プログラム「ISO11783プロトコルスタック」、機構-K05
    3)濱田安之(2011)農業機械学会誌、73(4):224-226