エレクトロポーション法によるサツマイモ栽培種の形質転換体作出

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要約

再分化能が低く、これまでは形質転換体の作出が困難であったサツマイモ栽培種の葉肉プロトプラストにエレクトロポーション法でハイグロマイシン耐性遺伝子を導入した形質転換体が作出できる。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・育種工学研究室、九州東海大
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:生物資源、植物バイテク
  • 専門:バイテク
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

サツマイモはカルスからの再分化能が低く、さらに遺伝子導入については栽培種での成功例は少ない。本研究では、エレクトロポーション法によりサツマイモ栽培種の形質転換体を作出する。

成果の内容・特徴

  • サツマイモ(千系682-11)無菌植物の葉より単離したプロトプラストを、0.5Mのマニトール溶液に5×105個/ミリリットルの濃度で懸濁し、エレクトロポーションを行う。1回の処理につき0.8ミリリットルの懸濁液を用い、ハイグロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドDNA、キャリアDNAをそれぞれ20ミューグラムずつ添加する。
  • 遺伝子導入装置はハリオのCFP-1を用い、遺伝子導入の電気的条件は、矩形波パルスで電界強度を450-550ボルト/センチメートル、パルス幅を10msとする。
  • エレクトロポレーション後10分間氷冷したプロトプラストを105個/ミリリットルの濃度で培地に懸濁して28度、暗黒下で培養を行う。培養開始後約80日後、40ミリグラム/リットルのハイグロマイシンを含むカルス形成培地で30日間選抜を行い、プロトプラストの形質転換効率を求めるとともに(表1)、ハイグロマイシン耐性カルスを再分化培地に移植する。
  • 電界強度500ボルト/センチメートル及び550ボルト/センチメートルの処理区においてハイグロマイシン耐性カルスからの再分化がみられる。再分化した植物体よりゲノムDNAを抽出してPCR分析を行うことにより、ハイグロマイシン耐性遺伝子が組み込まれていることを確認できる(図1)。
  • 再分化個体には、塊根の肥大がみられる(図2)。

成果の活用面・留意点

サツマイモの栽培種への有用遺伝子の導入が可能となる。ただし、異なる品種では再分化能が低く遺伝子の導入条件の検討が必要である。

具体的データ

表1.エレクトロポレーションを行ったプロトプラストの形質転換効率

 

図1.PCR法による導入遺伝子の検出

 

図2.形質転換体の塊根

 

その他

  • 研究課題名:ウイルス病抵抗性サツマイモの作出
  • 予算区分:バイテク(バイテク育種)
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年)
  • 発表論文等:Proceedingsofthe1stChinese-JapaneseSymposiumonSweetpotatoandPotato,1995.育種学雑誌、45巻(別2)、1995