品種の鞘葉伸長速度は催芽した酸素発生剤無被覆種子の出芽率に影響する

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要約

催芽した酸素発生剤無被覆種子を利用する場合、嫌気条件下において鞘葉の伸長速度が大きい品種では、湛水土中播種後に落水管理とする条件下において平均出芽速度は大きく、出芽率および苗立ち率も高い。

  • キーワード:鞘葉、出芽、水稲、湛水直播、苗立ち
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田作総合研究チーム
  • 連絡先:電話0942-52-0694、電子メールfuruhata@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、作物・稲
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

飼料用イネ栽培では今後一層の低コスト化技術が求められており、酸素発生剤を被覆しない種子での出芽安定化技術の開発が急務となっている。従来、多くの水稲品種を用いて、土中出芽・苗立ち検定が行われており、Italica Livorno、ASD1、Arroz da Terraなどが土中出芽・苗立ち特性に優れる品種として選定されているが、多くの品種を供試して、実際に湛水土中播種した水稲種子の出芽特性(出芽速度や斉一性)および嫌気条件下の鞘葉伸長性をともに数値化し、出芽・苗立ちとの関係を整理した報告は行われていない。このため、国内外128品種・系統の催 芽した酸素発生剤無被覆種子を供試して、鞘葉の伸長特性および湛水土中播種条件下における出芽特性と出芽・苗立ちとの関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 湛水土中播種条件下では平均出芽速度と播種後14日目の出芽率との間には1%水準で有意な正の相関関係が認められ、品種間の出芽の遅速によって出芽率の高低が異なる (図1A)。なお、出芽率が90%を越えたのは農林17号、藤坂5号、ヒヨクモチ、Us ros269、長香稲、三系0、Arborio、フジヒカリ、北陸157号の9品種・系統である。
  • 同様な関係は出芽速度と苗立ち率との間にも認められ (図1B)、品種間の出芽の遅速によって苗立ち率の高低も異なる。
  • 嫌気条件下において鞘葉の伸長速度が大きい品種では、湛水土中播種条件下における平均出芽速度は大きく (図2A)、出芽率および苗立ち率は高まる (図2B、図2C)。

成果の活用面・留意点

  • 湛水土中直播水稲栽培の品種選定の知見として活用する。
  • 湛水土中播種条件下での平均出芽速度は、50%催芽(催芽によって発芽種子の割合を50%とした)種子を代かき土壌 深さ1cmに播種した後に落水管理し、2週間(平均気温19.9℃)にわたって毎日出芽数を調査した後、播種後日数をt、日別の出芽数をnとし、 Σn/Σ(t・n)として求めた。
  • 嫌気条件下での鞘葉の伸長速度 (鞘葉長/置床後日数) は、フラン瓶1個当たり20粒の50%催芽種子を置床した後に脱気した蒸留水を充填して密栓し、20℃の恒温器 (暗黒条件下) に設置した3日後に測定した。
  • 水稲では第2葉抽出後に光合成が開始されることから、本試験の結果では緑化した第2葉を抽出した状態を苗立ちと判断した。

具体的データ

図1 湛水土中播種条件下における播種後14日目までの平均出芽速度と出芽率および苗立ち率との関係 図2 嫌気条件下における鞘葉の伸長速度と湛水土中播種条件下における平均出芽速度、出芽率及び苗立ち率との関係

その他

  • 研究課題名:打込み式点播直播での無被覆種子の出芽安定技術の開発
  • 課題ID:07-01-05-*-28-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:古畑昌巳、山下 浩